飲食店の冷蔵庫

【ユースケース】HACCP義務化と高級食材の損失防止をIoTで実現

2026.06.17

【導入企業情報】

  • 業種:飲食業
  • 企業規模: 約70名
  • 導入サービス: 温湿度センサー、IoTゲートウェイ、IoT向け低容量SIM

導入の課題

こちらの企業では、厳選した高級食材を用いた料理を提供するレストランを4店舗展開していますが、食品衛生法改正に伴う「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の完全義務化」への対応において、以下の3つの深刻な課題に直面していました。

    • HACCPが求める「継続的な温度記録」の運用限界: HACCP基準を満たすには、冷蔵庫・冷凍庫の温度を毎日決められた回数計測し、長期間にわたって正確なログを保管する必要があります。しかし、多忙な調理現場では記録漏れや記入ミスが避けられず、信頼性の高い管理体制を構築できずにいました。

    • 店休日や夜間の「管理の空白時間」における衛生リスク: 手書きによる巡回チェックでは、店舗にスタッフがいない夜間や店休日の温度変化を追うことができません。万が一、深夜に冷蔵庫が故障して温度が上昇していた場合、それに気づかず翌朝に食材を使用してしまうという、食中毒に直結する致命的な衛生リスクを懸念していました。

    • 4店舗分の「衛生管理計画」の策定と監査対応の重荷: 店舗ごとに異なる厨房環境のなかで、一貫性のある衛生管理ログを本社で一元管理する仕組みがなく、保健所の立ち入り検査や外部監査に対して、自信を持って提示できるエビデンス(客観的証拠)の準備が大きな負担となっていました。

対策

これらのHACCP対応への課題を根本から解決するため、手作業に頼らない「HACCP完全準拠・自動温湿度監視ソリューション」を導入しました。

各店舗の冷蔵庫・冷凍庫内にワイヤレスの「温湿度センサー」を設置。店舗内の「IoTルーター」と「IoT向け低容量SIM」を経由し、24時間365日、15分刻みの高精度な温度データをクラウドへ自動的に送信・蓄積するシステムを構築しました。これにより、スタッフが一切手を触れることなく、法的に求められる温度管理ログが自動生成される環境を整えました。

さらに、HACCPの重要な考え方である「異常時の処置(計画に沿った行動)」を仕組み化。冷蔵庫の温度が設定基準を超えた場合は、即座に店舗責任者や本部のスマートフォンへアラームを通知する設定にしました。これにより、夜間であっても即座に異変を察知し、別の冷蔵庫へ食材を移管するなどの「法基準に則った迅速なリカバリー行動」が取れる体制を確立しました。

システム構成図

冷蔵庫温度の遠隔監視の構成図

導入効果

HACCP義務化への対応を主軸としたIoTシステムの導入により、店舗全体の衛生管理レベルの向上と、それに見合う圧倒的な業務効率化が実現しました。

    • 人為的ミスのない「100%確実なHACCPログ」の自動化: 温度チェックからデータ記録、クラウドへの長期保管までが完全自動化されたことで、人為的な改ざんや記入漏れのリスクがゼロになりました。保健所の監査時にも、ボタン一つで過去の正確な温度推移グラフを提出できる強固なコンプライアンス体制が整いました。

    • 「食の安全」の見える化によるブランド価値の守り: 24時間途切れることのない遠隔監視と異常検知アラートにより、深夜の故障による食材の傷みや菌の繁殖を未然に防げるようになりました。高級店として最も守るべき「食の安全・安心」がデータで可視化され、お客様や取引先への信頼性が飛躍的に向上しました。

    • 衛生管理の質を上げながら、店舗の現場負担を大幅削減: 毎日複数回行っていた手書きの温度測定と日報作成の業務が完全に撤廃され、4店舗合計で毎月数十時間の削減に成功。現場に「HACCPへの心理的・物理的な負担」を一切かけることなく、法律が求める最高水準の衛生管理をクリアできました。

導入のポイント

本プロジェクトが、HACCP対応の成功事例として高い効果を発揮したポイントは以下の3点です。

一つ目は、「HACCP運用の徹底的な自動化」です。衛生管理で最も形骸化しやすい「記録の継続」を人間ではなくシステムに任せることで、現場スタッフは調理や接客というコア業務に集中でき、運用のクオリティと業務効率をハイレベルで両立させました。

二つ目が、「IoT向け低容量SIMの活用による導入・維持コストの最小限化」です。送信データが温度の数値テキストのみである特性を活かし、安価な低容量SIMを採用したことで、4店舗分のランニングコストを数千円規模に抑制。コストを理由にHACCP対応を躊躇している飲食企業にとって、非常に現実的で魅力的な選択肢となりました。

三つ目が、「配線工事不要で営業を止めないスピード導入」です。ワイヤレスセンサーと独立したSIM内蔵ルーターの組み合わせにより、既存の店舗ネットワークに手を加えることなく、各店ともわずか数時間で設置を完了。多店舗展開における横展開のハードルを徹底的に下げたことが、早期の全店稼働につながりました。

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