
LTEモジュールとは?IoT機器の通信を担う技術と6つのメリット
2025.04.09
Contents
LTEモジュールとは?基本概要

LTEモジュールとは、携帯電話の通信規格:LTE(Long Term Evolution)を利用してデータ通信を行うための通信モジュールです。モジュールは「特定の機能を持った部品」を指していますので、LTEモジュールは「LTEの通信機能を持っている部品」という意味です。
無線通信を行うための通信チップが内蔵されていて、これを機器に組み込むと、スマートフォンのように直接LTE回線へ接続できます。
サイズや省電力性に優れたモデルが多く、遠隔監視や自動制御が求められるIoT機器や車載システムでも導入が進んでいます。近年は5Gへの注目が高まっているものの、LTEの普及率も依然として高く、既存のインフラを生かした開発や運用が引き続き行われています。
LTEモジュールを活用すると、多数のセンサーから集めた情報をリアルタイムで送受信できるため、スマートホームや自動運転システムのような先進技術を支える重要な要素です。LTEは、従来の3Gよりも高速かつ安定した通信を実現し、IoT機器や各種デバイスとの相性がいい通信規格です。
LTEモジュールの特徴

LTEモジュールは、さまざまな機器に組み込んでインターネット通信機能を簡単に付与できる重要な部品です。特にIoTデバイスや産業機器に広く活用されており、主な特徴として以下の点が挙げられます。
- 小型・軽量・省電力設計により、IoTや産業用途への適合が容易
- 通信速度が速く、通信頻度が頻繁でも対応できる
- 全国で利用できる(モバイルネットワークが利用できる範囲)
- 多様な用途に応じたデータ通信が可能
- Wi-Fiのようにアクセスポイントが不要
- 単独でインターネット接続できる
LTEがIoT機器に適している理由
LTEは、都市部の高層ビル群や山間部などの電波環境が厳しい場所でもつながりやすい特性を持っています。そのため、屋内外を問わずさまざまな環境で利用可能です。センサーやカメラなどをネットワークに直接接続できるLTEモジュールの利点は、リモート監視や遠隔制御を必要とする分野にとって大きな魅力です。
工場や農業などの現場ではより一層自動化・効率化が求められており、LTEモジュールの活用により機器のアップデートや故障の検知を迅速に行いやすくなります。IoT機器の活用シーンは多岐にわたりますが、LTEモジュールを組み込むと、以下のような用途で安定した通信が可能です。
- スマートメーター:電力や水道などの使用状況を自動送信
- GPSトラッカー:車両や物流のリアルタイム追跡
- 監視カメラ:遠隔で映像データを送信し、防犯対策に活用
- 農業・環境モニタリング:センサーで取得した気温などのデータを送信
このように、幅広い分野でより高性能で省電力なモジュールが続々と開発されており、今後一層の普及が期待されています。
LTEモジュールの6つのメリット

LTEモジュールの活用によって、デバイスがインターネットに直接つながり、以下のようなさまざまな恩恵を得られます。
1.高速かつ安定した通信
2.自前のアクセスポイントが不要で屋内でも屋外でも利用できる
3.デバイスに組み込む通信機能を開発するコストが不要
4.「技術基準適合認定」の申請が不要
5.遠隔でデータ管理・監視を行える
6.高いセキュリティと信頼性
1.高速かつ安定した通信
LTEは、携帯キャリアが運営する安定したモバイルネットワークを使用するため、通信品質が高く、干渉が少ないのが特徴です。Wi-Fiは周囲の環境に影響を受けやすいのに対し、LTEは長距離通信が可能で、安定した接続を維持できます。
LTEは携帯電話回線を利用するため、Wi-Fiや他の無線通信と比べても安定した通信速度を実現できます。データの遅延や損失を抑え、瞬間的なデータ送信受信が求められるシステムに最適です。
2.自前のアクセスポイントが不要で屋内でも屋外でも利用できる
LTEモジュールは携帯キャリアの通信網を利用するため、Wi-Fiのようにルーターやアクセスポイントを別途設置する必要はありません。そのため、設置コストを抑えながら、通信環境を構築できます。
LTEモジュールなら、都市部・山間部・海上でも、基地局の電波が届く限りスムーズな通信が可能です。Wi-Fiのようにルーターの設置や電波の届く範囲を気にする必要がなく、電波が届く場所ならどこでも通信可能です。これにより、屋外環境でも広いエリアで安定した通信が可能で、次のような用途に適しています。
- 移動体(車両・ドローン・物流追跡)のデータ送信
- 屋外設備(駐車場ゲート・農業IoT・防犯カメラ)の遠隔管理
- 広域エリアのIoTネットワーク構築(例:スマートシティ)
3.デバイスに組み込む通信機能を開発するコストが不要
Wi-Fiを利用する場合、アクセスポイントを設置したり、ネットワーク環境を整備したりする必要があります。しかし、LTEモジュールを活用すれば、既存の携帯電話ネットワークをそのまま利用できるため、通信インフラの構築コストや運用負担、デバイスに組み込む通信機能を開発するコストや手間が不要です。
4.「技術基準適合認定」の申請が不要
無線通信を利用するIoT機器を開発する場合、通常は電波法が定める「技術基準適合認定」の取得を求められます。しかし、認証済みのLTEモジュールを組み込めば、新たに認定を取得する必要がなくなります。
5.遠隔でデータ管理・監視を行える
LTEモジュールを組み込んだ機器は、遠隔でインターネットを経由して各種センサーから得たデータ管理や監視が可能です。スマートメーターや遠隔監視カメラなどに応用されており、メンテナンス作業の負担を軽減できます。
データのリアルタイム送信が可能
LTEモジュールを搭載すれば、IoTデバイスが取得したデータをリアルタイムでクラウドや管理システムに送信できます。これにより、以下のようなメリットがあります。
- リアルタイム監視・管理が可能(例:設備の異常検知)
- 即時対応ができる(例:物流の遅延対策、車両の位置情報把握)
- 最新データを常に取得できる(例:スマートメーターで電力消費を即時測定)
6.高いセキュリティと信頼性
Wi-Fiの場合、不正アクセスや通信の傍受リスクがあるため、セキュリティ対策を自社で行う必要があります。しかし、LTEモジュールを利用すれば、携帯キャリアのセキュリティレベルが高いネットワークを使用できるため、通信の暗号化や認証機能が標準で備わっていて、安全性が高いです。
特に、次のような分野では高度なセキュリティが求められるため、LTEの活用が有効です。
- 金融・決済端末(クレジットカードリーダー、ATM)
- 医療機器(患者データの送信)
- 工場の機器管理(産業用IoT)
LTE回線はモバイルネットワークの強固なセキュリティ基準に基づいて運用されており、暗号化や認証通信が強化されていて、データの盗聴や改ざんのリスクを軽減できます。このように、多彩な利点を持つLTEモジュールは、5Gが登場した現代でも今後も長期的に利用される見通しがあります。
IoTの通信・セキュリティについてはこちらのページで詳しくご紹介しています!
IoT通信について詳しく見るLTEモジュールが対応する通信規格の特徴
LTEは広いエリアでの通信に適していて、障害物に強い周波数帯が含まれるため、IoT機器に向いている通信規格といえます。LTEモジュールには、用途に応じた下記のような通信規格が存在します。
LTEモジュールが対応する通信規格 ・LTE ・LTE-M(Cat.M1) ・NB-IoT(Cat.NB1) |
LTE(4G LTE)
4G LTEは高速通信が特徴で、日本全国で使用可能な通信規格です。上りと下りを周波数帯ごとに分けて通信するFDD-LTEと、上りと下りを時間ごとに分けて通信するTD-LTEがあり、日本の大手キャリアで採用されているのはFDD-LTEです。
LTE-M(Cat.M1)
LTE-M(「M」はMachineの略)は、IoT向けに最適化された通信規格です。医療機器やヘルスケアデバイス、貨物の位置情報の追跡など多彩なIoT機器で活用され、NB-IoTに比べて通信頻度やデータ量が多い端末に使用されます。低消費電力で低速(一般的に1Mbps)ながらデータの遅延や損失を抑えられるため、定期的なセンサーデータの送信や、位置情報の取得には十分な通信速度を提供します。
LTE-Mはデバイスのバッテリーが長持ちするように設計されていて、電源に接続できない状況でも長時間使用可能です。低速で通信容量の少ないプランを選択できるため、運用も低コストで済みます。
NB-IoT(Cat.NB1)
NB-IoT(Narrow Band-IoT)は、超省電力で低速な通信を特徴とするIoT向けの通信規格です。「NB」は「Narrow Band(狭帯域)」の略で、一般的なLTE通信が広い周波数帯域を使用するのに対し、NB-IoTは180kHzという極めて狭い帯域で通信を行います。
通信速度は上り62kbps/下り26kbpsと、LTE-Mよりもさらに低速ですが、超低消費電力と広範囲での通信を可能にするポイントです。NB-IoTは、スマートメーターや防犯機器などの警報通知に適しています。基地局を跨いでの通信はできず、移動しながらの利用には対応していません。
NB-IoTの主なメリット
◆超低消費電力で長時間運用が可能
通信間隔が長いため電力消費を抑えられ、バッテリー駆動でも数年間の運用が可能なIoT機器があります。
◆狭帯域を利用し、干渉に強い
180kHzという狭い帯域で通信を行うため、特徴として他の通信規格と比べて電波干渉の影響を受けにくいです。これにより、安定した通信が求められる用途に適しています。
◆通信速度は低いが、低頻度データ送信には最適
高速なデータ通信には向いていませんが、超低消費電力で、スマートメーターや遠隔監視システムなどの低頻度で小さなデータを送信する用途に適しています。
◆低コストで導入しやすい
回路設計がシンプルなため、低コストで導入が可能です。特に大量のIoT機器を展開する際にコスト削減のメリットがあります。
NB-IoTの活用例
- スマートメーター(電気・ガス・水道の遠隔検針)
- インフラ設備の遠隔監視(通信基地局やパイプラインの監視)
- 環境モニタリング(温度・湿度・空気質の測定)
- 農業IoT(土壌水分センサー、気象データ収集)
LTEモジュールを活用したIoT機器の通信環境
LTEモジュールのバンドと周波数の重要性
LTEモジュールを検討する際、対応バンド(周波数帯域)の確認が重要です。LTEは700MHz~3.5GHz帯の周波数を使用しており、周波数によって通信特性が異なります。周波数が高くなるほど通信速度も高速になりますが、障害物に弱くなります。
特に低周波(700~900MHz)のプラチナバンドと呼ばれる周波数帯は電波の回り込みが良く、障害物に強いため、屋内や広いエリアでの通信に適しています。IoT機器にLTEモジュールを組み込み、全国規模で導入する場合などは、このプラチナバンドが重要な役割を果たすでしょう。
すべての周波数帯に対応するキャリアはないため、実際に使用するエリアで電波が入りにくい地域がある場合、通信テストをするなどして導入前に確認が必要です。慎重に選ぶ必要があるでしょう。各キャリアへの周波数の割当て状況は下記に示す表のとおりです。
対応バンド・周波数の割当て状況(2024年9月時点)

画像引用元:移動通信システム用周波数の割当て状況 – 2024年度|総務省
最適なLTEモジュールの選び方
LTEモジュールを導入する際には、通信環境や予算を踏まえ、必要なスペックを慎重に検討することが大切です。たとえば、省電力性能を優先するのか、高速通信が必須なのかによって最適な製品は異なります。
また、将来的に拡張が必要となる場合は、相互接続性に優れたモジュールを選ぶと安心です。利用する周波数帯の対応状況も事前に確認し、実際の運用環境で問題が起きないよう備えましょう。
チェックポイント ・高速通信が必要か ・利用する周波数帯との適合性 ・事前の運用テストと相互接続性の確認 ・将来の拡張性に対応できるか |
また、国内外の通信事業者に対応しているかも見落とせない重要なポイントです。特に海外展開を視野に入れるなら、複数のバンドやプロトコルに対応したLTEモジュールを選択しましょう。サポート体制やオンラインの技術情報が充実しているかどうかも、導入後のリスクを軽減する上で考慮しておきたい要素です。適切な選定と運用によって、LTEモジュールは幅広い分野で効率的に活用できます。
FOMA(3G)回線停波の影響とLTEへの移行方法
NTTドコモのFOMA(3G)回線は2026年3月31日(火)にサービス終了予定です。これにより、「FOMAユビキタスモジュール」を使用しているIoT機器は、そのままでは通信ができなくなります。FOMAユビキタスモジュールは、自動販売機の在庫管理やタクシーなどの車両運行管理、小型情報端末による業務支援などで利用されています。
FOMA(3G)回線終了に関しては下記の記事で解説していますので、興味のある方はご覧ください。
関連記事:ソフトバンクの3G終了間近!次はドコモ!ガラケーを使い続ける方法は?
LTEへ移行する2つの方法
FOMA回線の終了に伴い、IoT機器をLTE対応へ移行する方法は大きく分けて2つあります。
①LTE対応の機器に交換する
既存のIoT機器をLTE対応の新しい機器にリプレイスする方法です。ただし、この方法には導入コストが高額で、入れ替え作業に時間がかかるというデメリットがあります。
(機器設置や設定変更が必要)
② LTE対応モジュールに交換する
より低コストでスムーズにLTEへ移行する方法として、FOMAユビキタスモジュールをLTE対応モジュールに交換する方法があります。この方法では、既存のIoT機器の仕組みをそのまま活かしながらLTE化が可能です。機器全体を交換するよりも安価であり、導入時間も短縮できます。
ただし、どのLTEモジュールでも代替できるわけではありません。FOMAユビキタスモジュールと同じデザイン・同じ接続コネクタを持つモジュールを選ぶ必要があります。以下に、対応するLTEモジュールを紹介します。
FOMAモジュールからLTE移行のポイントについてはこちらの資料で詳しく解説しています
LTEへの移行ポイントについて詳しく見るまとめ:LTEモジュールでコストを抑えて通信機能を迅速に実装
製品開発においてLTEモジュールを導入すれば、コストを抑えて通信機能を迅速に実装できます。そして、FOMA回線の終了に伴い、FOMAユビキタスモジュールを使用したIoT機器のLTE対応は必須です。コストや導入の手間を考慮すると、LTEモジュールへの交換が最も効率的な移行方法といえます。今後の運用をスムーズに行うためにも、早めの対策を検討しましょう。
※本記事は2025年3月17日時点の情報を基に執筆しています。
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