LTE-Mコミュニケーションのイメージ

LTE-Mとは?IoTの基礎知識と活用メリットを徹底解説

2025.04.24

Contents

はじめに:IoT革命を牽引するLTE-Mの役割

現代社会は、あらゆるモノがネットにつながるIoT(Internet of Things)によって、かつてない変革の波に洗われています。私たちの身の回りのあらゆるデバイスがオンライン化することで、利便性の高いサービスが次々と生まれ、ビジネスの現場では効率化が飛躍的に進んでいます。

しかし、ここで重要なのは、全てのIoTデバイスがスマートフォン並みの高速・大容量通信を必要とするわけではないという点です。むしろ、多くのIoTデバイスが真に求めているのは、以下の特性を備えた通信方式なのです。

省電力性
長期間の電池駆動を可能にし、メンテナンスの手間を大幅に削減できること。

広範囲な接続性
従来の通信方式では難しかったエリアでも、安定した通信を確保できること。

経済性
多数のデバイスを導入する際にも、コスト負担を抑えられること。

これらのIoT特有のニーズに応えるべく登場したのが、次世代通信技術「LTE-M」です。本記事では、今後のIoT社会の発展において不可欠な役割を担うLTE-Mの全貌を解説します。その技術的な仕組みから、実現できること、そして私たちの生活やビジネスにもたらす恩恵まで、LTE-Mの可能性を分かりやすく紐解いていきます。読み終える頃には、LTE-Mが拓く新たなIoTの世界を、より鮮明にイメージできるようになるでしょう。

IoTが社会にもたらす変革と新たな通信ニーズ

IoTは、工場のスマート化、サプライチェーンの可視化、スマートメーター、インフラ監視などで産業と社会を変革しています。家電の遠隔操作や見守りなど、私たちの生活も便利で安全になりました。
これらの変化には、IoTデバイスに最適な通信方法が不可欠です。デバイスの種類や用途で求められる通信条件は大きく異なるためです。
例えば、工場センサーのデータ量は少なく、頻繁な送信は不要で、重要なのは数年間の電池寿命です。また、ダム水位計や農地センサーでは、電源がなく電波が届きにくい場所も多く、Wi-FiやBluetoothでは不十分。但し、高速なLTEでは消費電力が大きすぎます。
このようにIoTの普及に伴い、「低データ量・低消費電力・広範囲」という新たな通信ニーズが生まれました。
 

なぜLTE-Mが注目されるのか?低速通信領域の課題と解決策

多くのIoT機器、特にセンサーや監視デバイスでは、高速・大容量通信は不要です。重要なのは低コスト、低消費電力での長期間安定稼働です。しかし、従来のLTEは高消費電力、Wi-Fi/Bluetoothは通信距離に課題がありました。その為、IoT分野では、「少量データ」「低頻度」「低電力」「広範囲」「低コスト」のニーズが満たされていませんでした。
この課題を解決するのがLPWA(Low Power Wide Area)です。LTE-Mはその代表格であり、既存のLTEネットワークを活用できる点が大きな強みです。全国の基地局を利用できるため、新たな通信網は不要。低消費電力技術により、小型電池でも長年通信可能です。
LTE-Mは、IoTデバイスの「バッテリー寿命」「通信範囲」「導入・運用コスト」の悩みを解決する有力な選択肢として注目されています。


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LTE-Mとは何か?基本概念と技術的特徴

加速度的に進むIoTのイメージ

「LTE-M」は、「LTE for Machine Type Communication」を短縮した名称で、直訳すると「機械同士の通信のためのLTE」となります。これは、私たちが普段使うスマートフォンのためのLTE通信とは異なり、多数のIoTデバイスが効率的にデータ交換を行うことに特化した、モバイル通信の新しい規格です。
世界的な通信規格策定団体である「3GPP(Third Generation Partnership Project)」によって、「LTE Cat-M1」という名称でも公式に定められています。既存の4G LTEネットワークの基盤技術を活用しながらも、IoTデバイスが求める「通信速度」「消費電力」「導入コスト」「通信可能エリア」といった要素を考慮し、システム構造を簡素化し、電力効率を向上させています。
多くのIoTデバイスは、センサーが計測した数値の送信や、遠隔の機器への簡単な指令送信など、データ量が少なく、常時ネットワーク接続を必要としません。LTE-Mは、このようなIoTデバイスの特性に最適化されており、電源供給が難しい環境や、多数のデバイスを経済的に運用したい場合に非常に有効な選択肢となります。

LTE-Mの定義:IoT向けに最適化されたモバイル通信規格

LTE-M(LTE Cat-M1)は、4G LTEを基盤にIoTデバイス向けに改良された通信規格で、3GPPが策定しました。
一般的なLTEは高速・大容量通信が目的ですが、多くのIoTデバイスは少量データを間欠的に送信すれば十分です。
LTE-Mは、このニーズに合わせ最大数百kbpsに速度を抑え、ハードウェアを簡素化、デバイスの小型化と低コスト化を実現します。
さらに、通信していない時の待機電力を大幅に削減する省電力機能により、バッテリー駆動IoTデバイスの長期運用が可能です。
既存の携帯電話網を利用するため、設置場所を選ばず、SIM認証や暗号化による高いセキュリティと信頼性も備えています。
 

LTE-Mの主要な技術的特徴:低消費電力・広域カバーの実現

LTE-MがIoT分野で特に役立つのは、その「バッテリーが長持ちする能力」と「電波が広い範囲に届く能力」にあります。これらの便利な特徴は、以下のような特別な技術によって実現されています。

・PSM (Power Saving Mode) による超低消費電力
デバイスがデータをネットワークに送った後、深い眠りにつくことができる機能です。数秒から数日といった、あらかじめ設定された期間、ネットワークからの呼び出しを受け付けずに眠り続けます。この深い眠りの間は、電力消費が非常に少なくなり、バッテリー寿命を大幅に延ばせます。

・eDRX (extended Discontinuous Reception) による待機電力削減
PSMよりも短い間隔ですが、デバイスが定期的に短時間だけネットワークに接続し、データが来ていないか確認する機能です。この「起きている時間を短くする」ことを繰り返すことで、通信を待ち受けている間の電力消費を効率的に減らします。

・カバレッジ拡張 (Coverage Enhancement) による広域カバー
電波が弱くて通信が難しくなりそうな場所(建物の奥、地下、遠隔地など)でも、通信を可能にする技術です。同じデータを複数回繰り返し送受信したり、受信側で弱い信号を複数まとめて強く認識したりすることで、通信の信頼性を高めます。既存のLTE基地局を利用できることに加えて、この技術が電波の届く範囲をさらに広げます。

これらの技術が組み合わさることで、LTE-MはIoTデバイスを「電池切れの心配をあまりせずに」「今まで電波が届かなかったような場所にも」設置し、長期間安定して運用することを可能にしています。

他のLPWA通信規格との比較:LTE-Mの優位性と選択基準

「LPWA(Low Power Wide Area)」という、少ない電力で広い範囲に通信できる技術のグループには、LTE-Mの他にも様々な種類があります。代表的なものには、NB-IoT(Narrowband-IoT)、LoRaWAN、Sigfoxなどがあり、それぞれに得意なことや向いている用途が異なります。皆さんがIoTで何をしたいかに合わせて、最適な技術を選ぶことが大切です。

主要なLPWA規格とLTE-Mを比較すると、以下のような違いがあります。

NB-IoT (Narrowband-IoT)
・LTE-Mと同じく携帯電話会社のネットワークを使います。
・LTE-Mよりもさらに通信速度が遅く、その代わりに電力消費を極限まで抑え、電波の届く範囲をさらに広げることに特化しています。
・ごく少量で infrequent(非常にまれ)なデータ送信(例:月に一度のメーター検針データ)に特に向いています。
・動き回るデバイスの通信(モビリティ)にはあまり向きません。

LoRaWAN / Sigfox
・携帯電話会社のネットワークではなく、免許が不要な電波の帯域を使います。
・自分で通信を受け取るためのアンテナや装置(ゲートウェイ)を用意すれば、独自の通信ネットワークを作ることができます。
・通信に使う部品(モジュール)が比較的安価な場合があります。
・通信の安定性やセキュリティのレベルは、ネットワークを構築・運用する事業者や環境に依存する場合があります。携帯電話会社が提供するような、全国規模での安定性や高いセキュリティレベルが保証されているわけではありません。

これに比べてLTE-Mの大きな強みは、以下の点にあります。

・既存の携帯電話ネットワークを活用できること
すでに広い範囲に整備されたインフラを利用でき、信頼性とカバレッジが比較的高い。

・キャリアグレードの信頼性とセキュリティ
携帯電話会社による運用・サポート体制、SIM認証や通信の暗号化など、高い信頼性とセキュリティが提供されます。

・NB-IoTより速い通信が可能
ある程度の速度が出るため、ファームウェアのアップデートなど、少量データより少し多めのデータのやり取りも可能です。

・モビリティ対応
動き回るデバイスとの通信も比較的得意です。


どのLPWAを選ぶべきかは、以下の要素を総合的に考えて判断する必要があります。

・必要なデータの量と送信頻度
・通信速度に求められる要件(リアルタイム性など)
・バッテリー寿命に求められる要件
・デバイスを設置する場所(電波環境、電源の有無)
・デバイスが動き回るかどうか
・必要なセキュリティレベル
・導入にかかる費用と毎月の運用費用
・システム開発・運用の体制

LTE-Mは、これらの要素のバランスが良く、多くの一般的なIoTアプリケーションにおいて、有力で現実的な選択肢となる技術です。

LTE-Mが織りなすIoTの未来図:多様な活用シナリオを徹底解剖

様々な分野のテクノロジーイメージのコラージュ画像
LTE-Mの「長寿命バッテリー」「広範囲通信」「安定性」により、これまで難しかった分野でのIoT導入が進み、社会の未来を変え始めています。センサーなどの少量データを効率的に収集・活用できるLTE-Mは、産業、インフラ、環境、日常生活で新たな価値と課題解決をもたらします。

ここでは、LTE-Mの具体的な活用と未来像を、主要分野の事例を通して解説します。各事例でLTE-Mが適する理由と、その特徴を示すことで、IoTの可能性を広げるLTE-Mの重要性を明らかにします。LTE-Mは単なる接続技術ではなく、新サービスやビジネスモデル、社会問題の解決に貢献する重要なツールです。

【産業分野】スマートファクトリーとサプライチェーンの進化:LTE-Mが導く次世代の産業革命

工場での生産の仕方を、最新技術を使って効率的で賢いものに変える取り組み(「スマートファクトリー」)や、製品が工場で作られてからお客様に届くまでの流れ全体(「サプライチェーン」)をもっとスムーズにすることは、会社が競争に勝ち抜いていくためにとても重要です。LTE-Mは、こうした産業分野の進化を支える、なくてはならない存在になっています。

・設備の稼働状況監視と予知保全
工場内の多数の機械に取り付けられたセンサーが、稼働状況、温度、振動、電力消費などのデータをLTE-Mで送信します。これらのデータを分析することで、機械が故障する前の異常な兆候を早期に発見し、計画的な修理(予知保全)を行うことが可能になります。突発的な機械停止による生産ラインのダウンタイムを最小限に抑え、生産効率を高めます。

・工場内・倉庫内の資産追跡
工具、治具、パレット、運搬車などにLTE-M対応の小さなタグを取り付けます。これにより、広大な工場敷地や倉庫内のどこに何があるかをリアルタイムで正確に把握できます。探し物にかかる時間を減らし、作業効率を向上させます。

・サプライチェーンでの貨物追跡・状態監視
輸送中のコンテナや貨物にLTE-M対応センサーを取り付け、位置情報、温度、湿度、衝撃などの情報を常に監視します。貨物の輸送状況をEnd-to-Endで可視化し、特に温度管理が重要な食品や医薬品の品質維持に貢献します。また、問題発生時の原因究明や対応を迅速に行えます。

工場の中の電波が届きにくい場所や、国内外を移動する貨物の追跡といった、広い範囲で安定した通信が必要な場面で、LTE-Mの能力が最大限に活かされています。これらの活用により、会社はデータに基づいた正確な判断ができるようになり、もっと効率的で、何か問題が起きてもすぐに立ち直れる強い生産や物流の仕組みを作ることができるようになります。

【社会インフラ】スマートシティの実現と公共サービスの進化:LTE-Mが都市の課題を解決する

多くの人が集まって暮らしている都市では、交通渋滞や、古くなった道路や橋、そしてゴミの処理など、様々な課題があります。これらの問題を、最新技術を使って解決し、もっと安全で、もっと便利で、そして環境にも優しい街にしよう、というのが「スマートシティ」という考え方です。スマートシティを作るためには、街のあちこちにたくさんのセンサーや通信できる装置を置く必要がありますが、それらすべてに電気の線を通したり、通信ケーブルを繋いだりするのは、場所によってはとても難しいことです。

ここで、LTE-Mが大切な役割を果たします。LTE-Mは、少ない電力で長い時間動き続けられ、広い範囲に電波が届くという特徴があるので、これまで通信が難しかった場所にもIoTデバイスを設置できるようになります。

・スマートメーターによる自動検針
各家庭やお店に設置される電気、ガス、水道のメーターにLTE-M通信機能を搭載します。これにより使用量を自動で集計し、遠隔地からデータを収集できるようになります。検針業務の効率化や、リアルタイムな使用量データに基づくエネルギーマネジメントを可能にします。

・スマートゴミ管理
街中にあるゴミ箱に充填率センサーを取り付け、LTE-Mでデータを送信します。ゴミの溜まり具合に合わせて、ゴミ収集車が効率的なルートで巡回できるようになり、収集コストの削減と街の美化に貢献します。

・インフラ設備の監視
橋、トンネル、道路、上下水道などにセンサーを設置し、劣化状況(ひび割れ、腐食など)や異常(振動など)を監視します。異常が発生した際に早期に検知・通報することで、大きな事故を未然に防ぎ、計画的なメンテナンスを支援します。

・環境モニタリング
河川の水位、雨量、大気汚染物質などを測るセンサーにLTE-Mを使用し、災害リスクの監視(洪水など)や、環境保護対策に必要なデータを収集します。

このように、LTE-Mの「電池が長持ち」「広い場所で使える」という特徴は、都市が抱える様々な問題を、小さなデバイスと通信の力で解決し、住民の暮らしをより快適で安全なものにするために、とても貢献しています。

【農業・環境分野】精密農業と持続可能な社会への貢献:LTE-Mが実現する次世代のグリーンイノベーション

農業の分野では、働く人が減っていることや、天気が急に変わること(気候変動)の影響などで、以前と同じように作物を育てるのが難しくなってきています。同時に、世界中の人々の食料をまかなうために、少ない資源でたくさんの作物を作る方法(「精密農業」)や、地球に優しい農業の方法が求められています。広い農場にセンサーをたくさん置いて、土の様子や天気の情報を集めたいと思っても、農場には電気や通信の線が通っていないことが多いので、これまではなかなか難しかったです。ここで、LTE-Mが力を発揮します。

・畑や田んぼの状態監視
土壌水分センサー、温度センサー、日照センサーなどを農地に設置し、LTE-Mでデータを送信します。これらのデータに基づいて、作物に必要な水や肥料を最適なタイミングで、必要な量だけ与えることが可能になります。水や肥料の無駄を減らしつつ、収穫量を増やしたり、作物の品質を良くしたりできます。

・家畜の管理
牛や豚といった家畜に、LTE-Mで通信できる小さなタグを取り付けます。家畜の位置情報、活動量、体温といった健康状態に関わる情報を遠隔から監視でき、多くの動物を効率よく管理したりするのに役立ちます。

・自然環境のモニタリング
森、山奥、川のそばといった、人が簡単に行けない場所に設置された環境センサー(気温、湿度、CO2濃度など)にLTE-Mを使用します。山火事の早期発見、気候変動の影響調査、生態系の監視など、自然環境の保護や研究に不可欠なデータを継続的に収集できます。

このように、LTE-Mは、農業をもっと効率的にしながら、同時に地球の資源を大切に使い、環境を守るための「グリーンイノベーション」を進める上で、大きな役割を担っています。これは、食料生産の安定化と環境負荷の低減を両立させることにつながります。

【コンシューマー・ヘルスケア分野】生活の利便性向上と健康管理:LTE-MがもたらすパーソナルIoT革命

LTE-Mの技術は、企業や社会の大きな仕組みだけでなく、私たちの個人的な日々の暮らしも、もっと便利に、そして健康に過ごせるように変えています。これを「パーソナルIoT」と呼ぶこともあります。

・ウェアラブルデバイス
スマートフォンを持たなくても単体で通信できるスマートウォッチや活動量計の一部にLTE-Mが搭載されています。位置情報の共有や、緊急時の通報などが可能になります。

・見守りデバイス
ご高齢の方や小さなお子さん向けのGPSトラッカーなど、居場所を知らせるデバイスに活用されます。電池が長持ちするため、安心して持たせることができ、もしもの時の安心につながります。

・遠隔健康管理
血圧計や血糖値計といった家庭用医療機器が、測定データをLTE-Mで自動送信します。医師や家族が遠隔から健康状態を把握し、日々の健康管理や治療をサポートできます。

・資産追跡
ペット、自転車、旅行カバン、貴重品などにLTE-M対応の小さな追跡装置を取り付けます。紛失や盗難の際に、どこにあるかをリアルタイムで確認できます。

小型で電池が長持ちし、広い範囲をカバーできるLTE-Mは、私たちの身の回りの「大切なモノ」や「大切な人」を見守り、日々の生活を便利にするための、とても頼りになる技術となっています。


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LTE-M導入が企業にもたらす変革:コスト削減、新たな収益機会

握手をするビジネスマンの手元
企業がLTE-Mを使ったIoTソリューションを導入することは、単に新しい技術を使うというだけでなく、会社の「稼ぐ力」を強くしたり、新しいビジネスチャンスを作ったりするための、大きな変化をもたらす可能性があります。LTE-Mの持つ便利な特徴や、これまでの活用事例からも分かるように、LTE-Mを導入することは、会社にとって以下のようなメリットをもたらします。

・コスト削減と業務効率の向上
・データ活用による新たな収益機会の創出

これらのメリットは互いに関係し合っていて、LTE-Mをうまく活用することで、会社は今よりもっと強く、そして長く続いていくための基盤を築くことができるのです。ここでは、LTE-Mを導入することで会社に具体的にどんなメリットがあるのかを、それぞれ詳しく見ていきます。

コスト削減と業務効率の飛躍的向上:LTE-Mが実現する具体的な経済効果を徹底検証

LTE-Mを会社に導入することは、様々な面から会社の出費を減らし、そして仕事の効率をぐっと良くすることにつながります。これは、会社にとって具体的な経済的なメリットになります。

具体的なコスト削減・効率向上の例としては、以下のようなものが挙げられます。

・電池交換や充電にかかる手間と費用の削減
LTE-Mデバイスは非常に少ない電力で動くため、バッテリー駆動デバイスの運用期間が飛躍的に伸びます。これにより、電池交換や充電のために人が現場へ行く回数や、新しい電池を購入する費用を大幅に削減できます。

・通信モジュールのコスト抑制
LTE-M用の通信モジュールは、普通のスマートフォン向けLTEモジュールよりも構造がシンプルであるため、製造コストが比較的抑えられています。多数のIoTデバイスを展開する際の初期投資負担を軽減できます。

・通信インフラ構築・運用費用の不要化
LTE-Mは既存の携帯電話ネットワークを利用するため、会社が自分で通信用の設備をゼロから作ったり、維持管理したりする必要がありません。また、これに伴う大きな設備投資や運用コストが発生しません。

・人手による作業の自動化・効率化
IoTデバイスから集まるリアルタイムなデータを利用して、これまで人が行っていた点検、監視、記録といった作業を自動化できます。人的リソースをより付加価値の高い業務に振り分けることが可能になり、業務全体の効率が向上します。

このように、LTE-Mは、デバイスや通信にかかるコストを削減するだけでなく、業務の無駄をなくし、より少ない時間や労力で、より多くの成果を上げられるようにするための、具体的な「経済効果」をもたらします。

データドリブンな新たな収益機会の創出:LTE-Mが拓くビジネスモデルの革新

LTE-Mを使うことで、これまで費用や技術的な理由からデータを集めるのが難しかった場所からでも、簡単にたくさんの種類のデータを集めることができるようになります。この集まったデータこそが、会社に新しい儲けるチャンスをもたらし、今までのビジネスのやり方(ビジネスモデル)そのものを新しく変える力を持っています。

データ活用によって生まれる新たな収益機会の例は様々です。

・製品のデータに基づく付加価値サービスの提供
製品にLTE-Mセンサーを取り付け、稼働状況や使用データを収集・分析します。これにより、顧客に対して「予知保全サービス」「利用状況に応じたメンテナンスサービス」「遠隔診断サービス」といった、製品販売とは別のサブスクリプション型サービスを提供できます。

・データ販売・データ分析サービスの提供
収集した匿名化・統計化されたデータを分析し、市場トレンドや顧客行動に関するインサイトを抽出します。この分析結果やデータを、サービスとして第三者に提供することで収益を得られます。

このように、LTE-Mを使うことで集められる「現場のデータ」は、今まで見えなかったビジネスチャンスを見つけ出し、製品やサービスに新しい価値を加え、データに基づいた革新的なサービスやビジネスモデルを生み出すための「燃料」となります。これは、会社の競争力を強くし、儲けるための方法を多様化することにつながります。

LTE-M導入プロセス:リスクを最小化し、成功へと導くステップバイステップガイド

成功までの過程を書くビジネスマンの手元
LTE-Mを活用したIoT導入は、業務改革や新サービス創出の好機です。しかし、新規導入には予期せぬ課題が伴う可能性があります。そこで、段階的な導入プロセスがリスクを最小化し、成功へと導く鍵となります。
ここでは、企業がLTE-Mを使ったIoTシステムをスムーズに導入し、期待される成果を得るための実践的なステップを解説します。

ステップ1:導入目的の明確化と具体的かつ測定可能な要件定義

どのような技術を導入するにしても、最も重要なのは「なぜそれが必要なのか」「何を達成したいのか」を明確にすることです。LTE-M導入の第一歩も、以下のように解決したい具体的な課題や実現したい目標を明確にすることから始まります。

例)
・設備の稼働率を〇〇%向上させる。
・物流コストを〇〇%削減する
・新たなデータサービスで年間〇〇円の収益を目指す。

この目標がはっきりしたら、次にその目標を達成するために必要な要件を具体的に決めていきます。必要な要件としては、例えば以下のようなものがあります。

・収集したいデータの種類
温度、位置、動いているかどうか、使用量など。

・データの送信頻度
1分ごと、1時間ごと、1日ごと、特定のイベント時など。

・必要な通信速度
どれくらいのリアルタイム性が必要か。

・バッテリー寿命の目標
どれくらいの期間、電池交換なしで動いてほしいか。

・デバイスの設置環境
暑い場所、寒い場所、湿気が多い場所、電波が届きにくい場所、屋外か屋内かなど、環境を考慮します。

・デバイスの数
全部で何台くらいのデバイスを使うか。

・許容できるデバイス単価
デバイス一つあたり、いくらまでお金をかけられるか。

・システム連携の要件
集めた情報を、会社のどのシステムと連携させるか(在庫管理システム、顧客管理システムなど)、どのような形式で連携するか。

これらの要件が曖昧なままプロジェクトを進めると、後になって仕様変更が発生したり、期待した効果が得られなかったりするリスクが高まります。関係者間で十分に議論し、要件を文書化して合意形成を図ることが不可欠です。このステップが、その後の技術選定やパートナー選びの基盤となります。

ステップ2:最適な技術要素の選定と信頼できるパートナー選び

要件が明確になったら、次にそれらを満たすための最適な技術要素を選定します。LTE-Mを選択する場合、具体的には以下の要素を検討します。

・LTE-M通信モジュール/デバイスの選定
実際にIoTデバイスとして使う機器、あるいは今ある機器にLTE-Mで通信できるようにするための小さな部品(通信モジュール)を選びます。ステップ1で決めた「サイズ」「消費電力」「価格」「通信速度」「外部とのつなぎ方(インターフェース)」といった条件に合うものを見つけます。市場には様々なメーカーから多様なモジュールが出ています。

・通信キャリアの選定
LTE-Mの通信サービスを提供している携帯電話会社を選びます。会社によって、LTE-Mが使える電波の範囲(カバレッジエリア)、データ通信量に応じた料金プラン、データを管理するための便利なツール(プラットフォーム)などを提供しているかどうかが違います。皆さんのサービス展開エリアや予算に合わせて最適なキャリアを選びます。

・プラットフォームの選定
IoTデバイスから集めたデータを蓄積し、処理、分析するための「クラウドプラットフォーム」や、たくさんのIoTデバイスを効率的に管理するための「デバイス管理プラットフォーム」を選びます。これらのプラットフォームは、自社で開発することも可能ですが、既存のサービスを利用する方が、開発期間やコストを削減できる場合が多いです。

・信頼できる外部パートナーの選定
もしLTE-Mデバイスの開発や、通信モジュールと他のシステムをつなぐ作業、集めたデータを活用するためのアプリケーション開発、あるいはシステム全体を一つにまとめる作業などが、会社の普段の仕事とは違う専門的な分野であれば、これらの作業を外注することも考えましょう。豊富な経験と専門知識を持つパートナーと共にプロジェクトを進めることで、技術的な課題を克服し、導入を円滑に進めることができます。複数の候補から提案を受け、比較検討することが推奨されます。

ステップ3:リスクを低減するPoC(概念実証)と段階的な本格導入、そして持続可能な運用体制の構築

LTE-M導入は新しい技術への取り組みとなる場合が多く、未知のリスクも存在します。そのため、本格的な大規模展開を行う前に、PoC(Proof of Concept:概念実証)を実施することが非常に重要です。

PoCでは、以下のようなことを検証します。

・限定的な環境でのシステム構築と検証

ステップ2で選んだLTE-Mデバイス、通信キャリアのサービス、データ管理プラットフォームなどを、実際の利用場所やそれに近い環境で、少数のデバイスを使って構築・接続します。「計画通りにデータが送受信できるか」「通信は安定しているか」「デバイスの電池は想定通り長持ちするか」「電波は必要な場所に届いているか」「集めたデータは正しくシステムに反映されるか」「セキュリティに問題はないか」といった重要な項目を、実際に動かしながら確認します。

PoCで見つかった問題点や、もっとこうした方が良いという改善点をもとに、最初に立てた計画や、選んだ技術、進め方などをもう一度見直します。こうすることで、本格的にたくさんの場所で導入する時に起こるかもしれない大きな問題を、事前に見つけて対策を立てておくことができ、リスクをぐっと減らすことができます。

PoCで十分に効果がありそうだという手応えが得られたら、次に「段階的な本格導入」へと進みます。

・段階的な本格導入

例えば、まずは特定の拠点やエリアから導入を開始し、そこで得られた運用ノウハウや改善点を次の導入フェーズに反映させていくアプローチです。これにより、大規模なトラブル発生リスクを抑えつつ、着実に展開を進めることができます。

・持続可能な運用体制の構築

本格導入後も、システムの安定稼働を維持するための運用体制の構築が不可欠です。デバイスや通信状況の常時監視、リモートでのデバイス管理、ファームウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用、トラブル発生時の対応フローなどを整備する必要があります。これらの運用プロセスを構築し、継続的に改善していくことが、LTE-Mを活用したIoTソリューションの長期的な成功には不可欠です。


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LTE-Mの未来展望:さらなる進化と可能性

スマートシティのイメージ

LTE-Mは既に実用化され成果を上げていますが、省電力化や新機能搭載など、更なる進化が期待されています。

次世代通信5Gが普及する中でも、LTE-Mは重要な役割を担います。5Gの高速・低遅延通信に加え、多数のデバイス接続(mMTC)には、低消費電力・広範囲接続のLTE-MのようなLPWA技術が不可欠です。LTE-Mは5Gと連携し、それぞれの強みを活かした高度なIoT環境を構築します。

LTE-Mの普及は、社会の効率化や環境負荷低減にも貢献し、持続可能な社会の実現に貢献するでしょう。以下に、LTE-Mの技術進化、5Gとの連携、社会への影響を解説します。
 

技術的進化:さらなる低消費電力化と機能拡張

LTE-Mの技術は、携帯電話の通信ルールを決めている3GPPという世界的な組織によって、常に新しい技術の研究や検討が進められています。これからも、LTE-Mがさらに使いやすくなるように技術的な改良が続いていくと期待されています。

期待されている技術的進化の方向性はいくつかあります。

・さらなる低消費電力化
PSMやeDRXの柔軟性の向上や、より効率的なデータ転送方式の導入などが考えられます。これにより、これまで以上にバッテリー交換の頻度を減らし、メンテナンスフリーに近い運用が可能なデバイスが増える可能性があります。

・機能拡張
より正確な位置情報測位機能の強化や、デバイス間の直接通信(Device-to-Device通信)機能の導入などが検討されています。これらの機能が実装されれば、LTE-Mを活用したIoTソリューションの応用範囲はさらに広がり、より複雑なM2M(Machine-to-Machine)連携や、位置情報を活用した高度なサービスが実現可能になります。

このような技術的な進化は、LTE-Mを使ってできることの幅をさらに広げ、より多様で高度なIoTアプリケーションの実現を後押しするでしょう。

 

LTE-Mがもたらすサステナブルな社会への貢献

LTE-Mの技術が社会に広く使われることは、会社がお金を儲けたり、生活が便利になったりするだけでなく、私たちが住む地球全体を、これからも良い状態で維持していくための「サステナブル(持続可能)な社会」を作る上でも、大きな助けとなります。

LTE-Mがサステナブルな社会に貢献する主な点は以下の通りです。

●資源の有効活用
電力消費の削減
デバイスの低消費電力により、バッテリーの長寿命化や、システム全体のエネルギー消費削減につながります。再生可能エネルギーとの組み合わせにより、環境負荷の少ない自律的なシステム構築が可能です。

廃棄物の削減

バッテリー交換頻度の低下により、使用済みバッテリーの廃棄量を減らせます。

水や肥料の無駄削減
精密農業において、必要な場所に、必要な量の水や肥料を与えることを可能にし、資源の無駄遣いを減らします。


●環境保護
効率的な資源管理
スマートシティでのエネルギーやゴミの効率的な管理は、限りある資源の有効活用につながります。

環境モニタリング
森、川、大気中などに設置されたセンサーが、環境データを収集し、汚染状況の把握や気候変動の影響調査、環境保全策の立案に貢献します。


●安全・安心な社会基盤
インフラ監視による設備の長寿命化や、災害リスクの早期検知は、社会のレジリエンス(困難な状況から立ち直る力)を高め、安全・安心な社会基盤の維持に貢献します。


このように、LTE-Mは単にモノをインターネットに繋ぐための技術であるだけでなく、エネルギーを節約したり、資源を効率よく使ったり、地球環境を守るための様々な取り組みを技術の面から支える力を持っています。これは、世界中の国々が協力して達成しようとしている「SDGs(持続可能な開発目標)」のような、地球全体で取り組むべき課題を解決するためにも貢献する、社会的に非常に意義のある技術と言えるでしょう。

まとめ

本記事では、IoT時代の重要技術LTE-Mの基本、特長、活用事例、企業メリット、導入方法、将来展望を解説しました。LTE-Mは、単なる通信技術ではなく、IoTの可能性を最大限に引き出し、社会課題を解決し、ビジネスを変革するための強力なツールです。この記事を通じて、LTE-Mについての大枠をご理解いただけたなら幸いです。自社のビジネスやサービスにおいて、LTE-Mがどのように活用できるのかを検討し、来るべきIoT時代の可能性を最大限に引き出してください。

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