世界初の市販携帯電話メーカー:モトローラとは?歴史や特徴を調査
2022.12.23
今回は堅実な製品作りで人気のモトローラについて深堀りしてみましょう。
「モトローラ」と聞くと、ちょっとマイナーで地味なスマホメーカーというイメージを持つかもしれませんが、実は「モトローラ」は携帯電話やスマートフォンの歴史において、重要かつ確かな足跡を持つメーカーです。
モトローラにどんな歴史があるのか、そして現在はどのような活動をしているのかなど、今回はモトローラについてその歴史や特徴などを探ってみました。
モトローラの歴史をふり返ってみよう
モトローラは、米イリノイ州で1928年にガルビン兄弟によって設立された「Galvin Manufacturing Corporation」(ガルビン・マニュファクチャリング・コーポレーション)を祖とするアメリカ企業です。
モトローラという社名は、Galvin Manufacturing Corporationの最初の製品であるカーラジオ「Motorola5T71」(1930年)で初めて使われた言葉で、1947年にはブランド名であったMotorolaを社名にし、Motorola社が誕生しました。
ちなみにMotorolaとは「motor(自動車)」と「ola(波、音)」からの造語です。
最初はカーラジオなど「音」を扱うメーカーだったんですね。
その後モトローラ社は、1950年には半導体部門を設立、1958年にはアメリカ初の人工衛星「エクスプローラ1」の無線機器を製造するなど発展していきます。
そして、1983年には世界初の市販携帯電話『DynaTAC 8000X』を発表、翌1984年に発売しました。8000Xはフル充電に10時間を要し、30分間の連続通話を実現していました。液晶パネルを備え通話先電話番号を表示でき、30件の通話先をメモリーすることができました。
『DynaTAC』は、車載しか出来なかった電話機を人が携帯できるサイズで登場したことが画期的でした。直方体の形状やその重さが同等だったことから「Brick Phone(レンガ電話)」と呼ばれました。
この『DynaTAC』によってモトローラの名は広く知られるようになります。
さらに1989年に発売した『MicroTac』は、90年代後半まで続く携帯電話の小型軽量化競争の火付け役となりました。日本で小型軽量を謳って一世を風靡したNTTドコモのムーバシリーズのベンチマークが「MicroTac」だったという逸話は有名です。
そうした意味でモトローラは、1990年代の携帯電話業界を牽引するトップ企業であったと言えます。
さらに2000年代になると、超薄型折りたたみ携帯電話『Razr(レーザー)』を発売、世界中でシリーズ合計1億台を超える大ヒットを記録します。日本国内でもNTTドコモから「M702iS」として発売され、薄型二つ折り端末の大流行の先鞭をつけたモデルでした。
こうした「世界初」や「大ヒット」モデルを次々に生み出したモトローラは、2006~2008年ごろにピークを迎え、2008年第二四半期にApple iPhone3Gに明け渡すまで3年間に渡って世界販売台数1位を保つほどの大企業となっていました。
しかし「Razr」以降はヒット作を生み出せないまま徐々に携帯電話事業は極度の不振に陥り、ついに携帯電話事業の分社化を発表し2011年に「モトローラ・モビリティ」が誕生するに至ります。
「モトローラ・モビリティ」となって以降も営業成績は振るわず、一時Google傘下となった後、特許技術の多くをGoogleは保有したまま株式を中国レノボに売却されました。レノボは独自に開発製造していた携帯電話事業を「モトローラ」ブランドに統一し現在に至ります。
現在のモトローラには若干のマイナーイメージがありますが、その歴史や生い立ちは携帯電話やスマートフォンにおいて重要なポジションを占める企業であることがわかります。
レノボ傘下となって以降のモトローラは、レノボブランドの端末もモトローラブランドに統一されたことから、高級機クラスよりも、エントリーレンジからミドルレンジの普及機クラスのスマホ端末の開発製造に注力しています。
比較的低価格帯のモデルが多いため、かつてのような大ヒット端末は生まれにくくなっていますが、それでも、2019年に米ベライゾンが提供を開始した世界初の携帯電話向け5Gサービスでは、同社が独占販売する「5G Moto Mod(5Gモジュール)」を搭載したモトローラ製「Moto Z3」が唯一の対応端末となるなど、先進技術への対応も怠っていません。
モトローラのスマホはピュアAndroid
モトローラに限らず、iPhone以外のスマホのOSはほぼAndroidですが、AndroidはiPhoneのOSであるiOSと比べると、アップデートが弱いと言われます。「弱い」というのは、アップデートが行われない、または行われても短期間で終了してしまう…という意味です。
OSはアップデートによって、最新のソフトウェアとセキュリティを端末に反映することができるため、アップデート対象となっている間は安心して利用することができます。
iOSはアップデート期間が長く、かなり古い端末でも最新OSのアップデート対象になっていて、例えば現行「iOS16」は2017年発売のiPhone 8/8 Plusまで5年間遡ってアップデート対象となっています。
Androidは、アップデート対象となる期間が短く、場合によってはアップデートが1度も行われない端末もあるなど、OSアップデートに関してはあきらかにiOSに差をつけられています。
iOSとAndroid-OSの違い
おなじスマートフォン向けのOS(operating system)である「iOS」と「Android」にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず単純に用途が違います。
iPhoneなどApple製の通信端末専用にAppleが開発するOSが「iOS」で、Appleが製造するスマホやタブレットに「Android-OS」を搭載した端末はありません。
逆に、Apple以外のメーカーが製造した端末に「iOS」は採用できないので、Apple製以外のスマホのほぼすべてがAndroid-OSを搭載したスマホということになります。
Android-OSはGoogleが開発するスマホ向けOSで、オープンソースとして公開されており、誰でも自由にAndroid-OSを使うことができカスタマイズも許可されているため、Apple以外の端末メーカーが採用しています。
まれに、メーカー独自のOSを搭載しているケースもありますが、その多くがGoogleによって自由なカスタマイズが許されているAndroid-OSをベースに作られています。
2つ目の違いは管理体制です。
iOSはAppleが開発するOSで、Apple製以外の端末に搭載されることは許されていないので、OSに新たな機能を加えたり、セキュリティ対策を強化したりするなどの変更をAppleの一存ですべてのiPhoneに対して実施することができます。
一方のAndroid-OSは、端末メーカーが自由に採用、カスタマイズが許されているため、新機能やセキュリティ強化などがあっても全端末一斉に適用ということはできません。
iOSとAndroid-OSにはそんな違いがあります。
なぜAndroid-OSのアップデートは弱いのか
ではなぜAndroid-OSはアップデートされなかったり、アップデート期間が短かったりするのでしょうか。
前項で述べたように、iPhoneは開発製造販売などすべてをApple社単一で行っているのに対して、Androidスマホは、無償提供されるAndroid-OSを使って端末メーカーが自由に開発製造を行っています。
そのためiPhoneは、その時々でAppleが最新・最高と考える端末を発売するため、バリエーションは少ない代わりにすべてをAppleが管理下に置いて一元的にOSアップデートを行うことができます。
その結果、iOSはアップデートが頻繁に実施されます。ちなみに現行iOS16は、2022年9月13日にリリースされ、同年9/15には早くも「iOS16.0.1」、同9/23には「16.0.2」がリリース、2022年12月までのおよそ3か月間で6回ものアップデートが実施され、バージョンは「16.1.2」となっています。
分かりやすく言えば、Appleが「これを採用したい」「ここを変えたい」と思えば、誰に気兼ねすることなく、即時にそして一斉にアップデート版を配信することができるわけです。
対してAndroidスマホは、メーカー各社がAndroid-OSを自由にカスタマイズすることで、各社独自のスマホの特徴を出しやすいためバリエーションが豊富である反面、OSアップデートへの対応もメーカーに一任されているため一元的なアップデートができません。
というのも、カスタマイズしたOSはアップデートのたびにカスタマイズ部分も修正が必要となることから、メーカーとしてはアップデートへの対応がどうしても消極的になりやすいのです。
Android-OSのアップデートがiOSほど頻繁に行われない理由はそんなところにもあるのです。
モトローラはピュアAndroidを採用
そんなカスタマイズに自由度があるAndroid-OSですが、モトローラ製のスマホでは、いわゆる「ピュアAndroid」が採用されています。
「ピュアAndroid」とは、端末メーカーが独自のカスタマイズを行わず、Googleが開発したままのカタチで採用されたAndroid-OSを指します。
実は、Googleが開発したままのカタチで採用されたAndroid-OSはあまり多くなく、Google自身が開発製造する「Google Pixel」と、Googleの仕様でメーカーが製造する「Android One」の端末以外で「ピュアAndroid」を採用するのはモトローラぐらいです。
「ピュアAndroid」だからといって特に何か特別なことがあるわけではありませんが、カスタマイズしていないだけ、アップデートに対応しやすいという側面はありそうです。
モトローラ製スマートフォンの特徴
現行のモトローラ製スマホは、リーズナブルな価格の割に高機能だと人気があります。
一時は販売不振に陥ったモトローラですが、レノボ傘下となって以降、また魅力的な端末を多数送り出しています。
DSDS・DSDVを搭載
デュアルSIMは、現在のスマホの定番となっていますが、一口にデュアルSIMといってもいくつか種類があります。
最も初期のデュアルSIMは、「DSSS(デュアルSIM・シングルスタンバイ)」で、2枚のSIMを装着できるが使えるのは片方だけでした。他方のSIMを使うためには手動で切り替える必要がありました。
後にDSSSは「DSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ」に進化、SIMを切り替えなくてもいずれかに着信した電話を受けることができるようになりました。ただし、DSDSでは片方のSIMで通話している際に、もう片方のSIMで通信することはできません。
さらに進化した「DSDV(デュアルSIM・デュアルVoLTE)」では、一方のSIMで通話中でも、もう片方のSIMで同時に通信ができないのは同じですが、どちらのSIMで通話してGによる高音質通話が可能になりました。
モトローラ製スマホは、これらの「DSDS」や「DSDV」の機能を格安スマホに導入したパイオニア的な存在です。
モトローラの血統「折りたたみ」スマホ
microTACで一世を風靡したモトローラの血統ともいえる「折りたたみ式」のスマホが「motorola razr 5G」です。
独特な形状は他社製品にはないオリジナリティに溢れますが、特徴は外見だけにとどまらず、高性能CPU「Snapdragon765G」を採用、RAM8GBを搭載し軽快な動作で使い勝手のよいスマホとして人気があります。
UIに優れるMotoアクション
「Motoアクション」とは通常のスマホ操作とは別に、スマホにアクションを加えることで様々な機能を簡単に呼び出して使用することができる仕組みです。
ワンボタンナビ
通常は画面下部に表示されている「ナビゲーションバー」の機能を指紋センサーをスワイプ操作することで、片手指一本で操作できるようになります。
・「戻る」…指紋センサーを右から左にスワイプ
・「履歴を表示」…指紋センサーを左から右にスワイプ
・「ホームに戻る」…指紋センサーをタップ
クイックキャプチャー
手首を素早く2回捻るとカメラを起動できるアクションです。「クイックキャプチャー」を使えば、カメラ起動に手間取ってシャッターチャンスを逃がす…なんてこともグッと少なくなります。
フラッシュライト点灯
夜間の帰宅時の開錠や足元照明にスマホライトを使うことはよくありますが、Motoアクションならスマホを2回振り下ろすだけでフラッシュライトが点灯できます。
電話着信音停止
電話を着信している時にスマホを持ち上げると着信音が停止するアクションです。着信したことは音で知らせて欲しいが鳴り続けるのは困る…といった場合に便利な機能です。
伏せておくだけで無音化
スマホ画面を下向きに置くことで「通知」だけを停止するアクションです。電源OFFや機内モード、マナーモードと違い、音とバイブが停止するだけで、メールやSNS着信、テザリングなどの他の機能は通常通り動作し続けます。
片手操作が可能な画面縮小
片手しか使えない場合に、画面を縮小して指が届きやすくするアクションです。画面を下→上にスワイプで画面中央に縮小、左→右で画面右に移動、右→左で画面左に移動します。ただしワンボタンナビと同時利用はできません。
Motoアクションは一部の端末で利用可能です。
Motoアクションについてはモトローラ公式動画がありますのでご参照ください。
➡ 動画はこちら
多くのMVNOに採用される「Moto G」シリーズ
現行モトローラ製スマホのミドルレンジを担うシリーズで、多くの通信会社に採用されているモトローラの売れ筋シリーズです。
moto g30 | moto g31 | moto g50 5G | |
OS | Android 11 | Android 11 | Android 11 |
CPU | Qualcomm Snapdragon 662 オクタコア |
MediaTek Helio G85 オクタコア |
MediaTek Dimensity 700 |
RAM | 4GB | 4GB | 4GB |
ストレージ | 128GB | 128GB | 128GB |
画面サイズ | 6.5インチ | 6.4インチ | 6.5インチ |
SIM | DSDV 4G nanoSIM×2 |
DSDV 4G nanoSIM×2 |
DSDV 5G nanoSIM×2 |
バッテリー | 5,000mAh | 5,000mAh | 5,000mAh |
カメラ | 6,400万画素 4眼 |
5,000万画素 3眼 |
4,800万画素 3眼 |
モトローラ まとめ
ここまで見てきたモトローラには以下のような特徴がありました。
・モトローラは世界初の市販携帯電話『DynaTAC 8000X』を発売した
・『MicroTac』は小型軽量携帯電話の先駆けとなった大ヒットモデル
・『Razr』は、世界で1億台以上販売された薄型二つ折り端末
・一時は世界最多の販売台数を誇るも徐々に業績が悪化し現在はレノボ傘下となっている
・レノボは同社の携帯電話をすべて「Motorola」ブランドに統一した
・現在のモトローラのスマートフォンは、DSDS/DSDV機能を積極的に採用している
・現在のモトローラのスマートフォンは、高機能ながらリーズナブルな価格設定
・モトローラ独自の「Motoアクション」はスマホ操作を簡単にする機能
実際に使ってみるとわかるのですが、Motoアクションは使い慣れれば非常に操作が素早く簡単になるなかなか優れた機能です。
普及機を中心に展開しているため、価格帯も比較的リーズナブルなのに高機能といった高コスパの評価も得ているモトローラのスマートフォンは、エントリークラス~ミドルクラスのスマホをお探しの方におすすめです。
画像出典:unsplash.com
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