格安SIMで5Gは使えるか~格安SIMで5Gを使う意味や価値はあるのか

2022.08.01

今回のテーマは格安SIMにおける5G通信についてです。
最近、次世代通信の担い手として5G通信が注目を集めており、キャリア各社がその優位性をアピールしていますし、端末メーカーでも普及クラスにも5G対応の端末が続々と発売されています。
今回は、そんな5G通信が格安SIMで利用できるのか、5G通信利用にデメリットはあるのか、そして、格安SIMで5G通信を使うメリットは果たしてあるのかなどを検証してみたいと思います。

5G通信とは~その特徴やメリット・デメリット

そもそも「5G」とは何を表す言葉かご存知でしょうか? 「5G=5th Generarion」で、『第5世代の通信規格』という意味です。

ちなみに、現在主流で利用されているのは「4G=4th Generation」で、その前の世代はiPhone 4sなどの「3rd Generation」でした。
5Gの特徴は大きく分けて3つです。

・『大容量・超高速』(eMBB:enhanced Mobile Broadband)
・『低遅延』(URLLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications)
・『多接続』(mMTC:massive Machine Type Communications) です。

大容量・超高速通信

現在の4G通信の高速化技術の1つに「4×4 MIMO」があります。

これは、基地局側と端末側の両方に4本のアンテナを用いて通信する高速化技術ですが、これを発展させた5G通信向けの「Massive MIMO」が超高速通信を支えます。

「Massive MIMO」は、通信速度を高速化しやすい高周波数帯の電波を用い、数十~数百のアンテナからデータ送信を行うことで、4Gの比ではない超高速通信を実現します。

国連の専門機関「国際電気通信連合」による5Gの目標速度は『20Gbps』と、現行4Gの約20倍の速度を目指しています。

また、5Gで使用する高周波数帯の電波は帯域幅が広いため、一度に大量のデータを送信できることから『大容量・超高速』通信が実現できるのです。

低遅延

これは、通信速度の計測アプリなどで「ping値」として表示されるもので単位は「ms(milli second=ミリ秒)」で表されます。pingとは簡単に言うと「応答速度」のことです。

例えば、スマホでWEBサイトにアクセスした冒頭部分で動きがない状態があって、少ししてWEBサイトの内容が表示される場合がありますがこれは遅延です。
WEBサイトの内容が表示されるまでのインターバルの長さなどを「ms」で表します(1msは1秒の1,000分の1)。

このping値が改善することで、人には「サクサク感」の向上として認識されます。
「国際電気通信連合」による応答速度の目安は、4G通信では「10ms」でしたが5Gでは「1ms」です。

多接続

同時に多くのデバイス(端末)の接続を可能にします。
4G通信において、基地局と端末の同時接続数は10万台/㎢ですが、5Gになると10倍の100万台/㎢になります。

現在、繁華街の基地局ではアクセス数が多くなりすぎて通信速度の低下が起こるような場面がありますが、5Gでは10倍のデバイスが同時接続できるようになり低遅延性能と相まって快適な通信環境が実現できます。

スタジアムでのスポーツ観戦時に、観客全員がスマホにアクセスしてリプレイを見る…といった状況でも、快適な動画再生が確保できるなど活用の場はさまざまです。

現在の日本の5G通信サービス


すでに、通信キャリア4社は個々に5G通信サービスを開始しています。
まだ5G通信エリアは首都圏に限られており実用的な通信エリア構築には至っていませんが、徐々にスマホ画面で「5G」表示を見る機会も増えてきています。
我が国の5G通信にはいくつかの種類があります。

・ミリ波
・Sub-6
・転用5G

5G通信の本命「ミリ波」

ミリ波とは、一般的には30GHz帯~300GHz帯の超高周波数帯の電波のことを指しますが我が国の5G向けに利用するのは28GHz帯の電波です。
電波は周波数が高くなるにつれて直進性が強くなり高速化しやすい特性を持っている上、これまであまり活用されていなかった(同じ帯域を利用しているサービスが少ない)帯域なので、帯域幅を広くとることができるため一度に伝送できるデータが多いのが特徴です。

電波として高速であるうえ、伝送量も多いため『大容量・超高速通信』の本命とされています。

ただ、直進性が強いことは通信電波としての使い勝手は良くないことや、通信キャリア各社が取り扱ったことのない帯域の電波であることから技術的ハードルは高く、普及には時間がかかると言われています。

余談ですが、4G通信において楽天モバイルが「繋がらない」とされる原因がプラチナバンドを割り当てて貰えない事が要因の1つとされています。

プラチナバンドは、700~900MHzの低い周波数帯の電波で直進性が弱く大きくうねるように進むため、ビルや障害物の陰や裏手にも電波が回り込み「圏外」ができにくい電波とされていますが、楽天に割り当てるプラチナバンドの空きがなく1.7GHzの高い周波数帯のみが割り当てられました。

その結果、楽天モバイルは通信エリア内なのに圏外エリアが残ってしまう状況の解消に苦労しています。

5Gもそれと同じで、周波数帯が高くなればなるほど取扱いが難しく、面として通信エリアを構築するのが難しい側面を持っているのです。

5Gの実用性を担ってゆくSub-6

「ミリ波」が28GHzの超高周波数帯の電波であるのに対して、「Sub-6(サブシックス)」は一般的には6GHz以下の周波数帯の電波を指し、ミリ波より障害物の陰に回り込みやすいとされています。

我が国での5G通信に用いられるのは「3.7GHz」「4.5GHz」帯の電波ですが、通信キャリア各社はこれまで4G用に「3.5GHz」帯を使ってきた経験があるため、技術的なハードルが低く対応しやすいとされています。

ただ、それが額面通りの言葉であれば、現在、楽天モバイルが割り当てられている1.7GHz帯の4G通信で「繋がらない」問題を抱えていることはないはずです。

少なくとも700~900MHz帯のプラチナバンドよりははるかに直進性が強いのは確かで、直線だけで面を塗りつぶすには何本もの線が必要となる(つまり多くの基地局が必要)事から、5G通信エリアがなかなか拡大しない要因ではないかと考えられます。

4G基地局を活用する転用5G

5G向けに用意された「ミリ波(28GHz帯)」や「Sub-6(3.7/4.5GHz帯)」とは違い、現在4Gに使用している帯域を5Gに転用する「転用5G」が推進されています。
既存の4G基地局の設備を転用して5Gの電波を送受信するため、安価にエリアを拡大しやすいくauおよびSoftbankは「転用5G」によるエリア拡大を積極的に進めています。
過日、NTTドコモも「転用5G」によるエリア拡大を行うことを発表しています。
「転用5G」の設備は4G向けを使用するため、通信速度は4G通信と同等程度で本来の5Gのような数百Mbps等の超高速通信はできないため「なんちゃって5G」と揶揄されることが少なくありません。
しかし、昨今の4G通信は高速化技術によって、100Mbps超の速度を出せるケースも多くなっており4Gの速度に大きな不満はありませんし、「転用5G」でも「低遅延」性能は体感できることから、ある意味では実用的な5Gとしての役割は充分果たせるのではないかと考えられます。

5G通信を利用する上で必要なこと

ユーザーとして5G通信を利用するには、以下の3つの条件を揃える必要があります。
条件の1つでも欠ければ5G通信は利用できません。

通信キャリア

利用している通信サービスが5G通信を提供しているかどうか…です。
NTTドコモ・au(KDDI)・Softbank・楽天モバイルの自社通信網を保有する大手通信キャリアは全て5G通信サービスを提供しています。
UQmobile・Y!mobileといった各キャリアが運営する「サブブランド」、ahamo・Povo2.0・LINEMOなどの通信キャリアの「格安プラン」でも5G通信サービスを提供しています。
しかしMVNOの場合は、同じキャリア回線を使用しているからと言って、必ずしも5G通信サービスを提供しているとは限りません。MVNOで5G通信サービスを提供しているのはごく一部です。
従って、「5G通信を利用したい」ということであれば、大手通信キャリア4社と、各々のサブブランドや格安プランを利用するか、一部の5G通信サービス提供のMVNOを選ぶ必要があります。

通信エリア

利用する場所が5G通信サービスの『通信可能エリア』内である必要があります。

画像出展:https://www.docomo.ne.jp/area/service_area.html#service-area

これは、NTTドコモの5G通信エリアマップの首都圏周辺を拡大したものです。
NTTドコモに関しては、「Sub-6」のエリアが東京都以外にも神奈川県・埼玉県・千葉県などへの拡大が見られますし、「ミリ波」アンテナも他社よりも広範囲に設置が進んでいます。
また先日、NTTドコモは従来行って来なかった4G施設転用によるエリア拡大を行う旨を発表していますので、最も5Gエリアの拡大が進んでいるキャリアと言えるでしょう。

NTTドコモ・ahamoの利用者は追加料金なしにドコモ5G通信を利用可能です。

一部のMVNOで、ドコモ5G通信を利用可能ですが、追加料金の有無は事業者ごとに要確認です。


画像出展:https://www.au.com/mobile/area/map/

こちらはau(KDDI)の5G通信エリアマップです。
少々見にくいマップですが、「ミリ波」はもちろん「Sub-6」であっても東京23区内に集中しており、神奈川県・埼玉県・千葉県に拡大しているのは、4G施設転用の「転用5G」エリアです。
低遅延などのメリットはあるものの、通信速度自体は4Gと大差ないため「なんちゃって5G」と言われていますが、そもそも4Gでも100Mbps超の高速通信が可能になっている現在、「なんちゃって5G」でも実用上はあまり問題ないように思います。
au・UQmobile・Povo2.0のユーザーはauの5G通信サービスを追加料金なしに利用可能です。
auの5G通信サービスを提供するMVNOも僅かながら存在します。


画像出展:https://www.softbank.jp/mobile/network/area/map/

Softbankのマップも色分けが見にくく判別しにくいですが、「ミリ波」「Sub-6」の本来の5Gは東京23区内がほとんどで、周辺地域へ拡大しているのは「転用5G」(700MHz・1.7GHz・3.4GHzのエリア)です。

Softbankは「転用5G」エリアの拡大に最も積極的なキャリアです。
神奈川県の県央部分の密度に注目すると、auとの密度の違いがはっきりわかりますし、埼玉県・千葉県への拡大もより進んでいるように見えます。

Softbank・Y!mobile・LINEMOのユーザーは追加料金なしにSoftbankの5G通信を利用可能です。
Softbankの5G回線を使用した5G通信サービスを提供するMVNOも選択可能です。

通信端末

5G通信を利用するには、通信端末=つまりスマホやタブレットが5G通信対応であることも必要条件です。

4Gで使用していた端末でも5Gに対応している製品もありますし、逆に5Gには対応していない製品も市場に混在しているので、購入・買い替えの際には5G通信対応であることを確認する必要があります。

iPhoneの5G対応は非常にシンプルです。
2020年発売の『iPhone 12』シリーズ以降の端末はすべて5G対応です。
以下は5G対応のiPhoneです。

iPhone 12 シリーズiPhone 13 シリーズiPhone SEシリーズ
iPhone 12iPhone 13iPhone SE 第3世代
iPhone 12 miniiPhone 13 mini
iPhone 12 ProiPhone 13 Pro
iPhone 12 Pro MaxiPhone 13 Pro Max

なお、日本国内で販売されるiPhoneは、日本で5G通信に使われるすべての電波(周波数帯域)に対応しているので、通信キャリアの違いを気にする必要はありません(SIMロック端末を除く)。 Androidスマホの場合は、メーカー各社間で統一性がないため、iPhoneのように「(発売年)○○年以降」や「(機種名)××以降」といった明確な線引きができません。

端末個々に5G通信対応かどうかを確認する必要があります。

5G通信利用上のデメリット

5G通信は『大容量・超高速通信』『低遅延』『多接続』といったメリットについてはよく喧伝されていますが、デメリットも少なからず存在します。

『大容量・超高速通信』であること自体はメリットでも、バッテリーの消耗や、通信コストにも大きな影響を与えます。

大容量通信・超高速通信を行えば当然バッテリーにかかる負担は大きくなりバッテリーの持ちが悪化する可能性があります。

バッテリーの消耗が激しく充電回数が増加すれば、それだけ端末の寿命も短くなり、長期的には端末購入コストの増大にも繋がります。

また、大容量通信・超高速通信を行えば伝送量が増大し、月間のデータ容量の消耗が激しくなる可能性があり、より容量の大きな上位プランへのプラン変更が必要になれば月額コストが増大します。
IoTなど5Gが活躍するフィールドもある一方で、不必要な大容量化・超高速化は一般ユーザーにはメリットだけでなくさまざまなデメリットももたらす可能性があります。

5G通信と格安SIMの親和性・実用性

格安SIMの中には5G通信サービスを提供する事業者もありますが、大半は、未だ5G通信サービスの提供をしていません。

果たして格安SIMでも5G通信サービスの提供が必要でしょうか。

本来「格安SIM」は、通信量を安く抑える代わりにそこそこの通信品質と通信速度を受け入れるといったトレードオフが行われる通信サービスです。

通信品質や速度などを落としなくない場合は、大手通信キャリアやそのサブブランドなどを利用すべきです。

大容量の動画・映画の視聴やオンラインゲームなどの利用でも、必ずしも5Gが必要とは言い切れません。状態が良ければ4Gでも問題なく視聴・プレイが可能です。

そうした格安SIM本来の存在意義を踏まえると、大容量通信・超高速通信は相容れないように感じます。
4G通信でも100Mbpsを超える昨今、月の料金を抑えたい意向を持つユーザーにあえて5G通信が必要かどうかについては「必ずしも」という注釈が付くのではないでしょうか。

格安SIMで5Gを使う意味や価値はあるのか まとめ

・5Gは5th Generationの略で第5世代の通信規格を指す
・5Gは『大容量・超高速』『低遅延』『多接続』のメリットを持つ
・5G通信は、現行4G通信の約20倍の通信速度で通信可能である
・5G通信は、反応が早く現行4Gの約1/10のPING値となる
・5G通信は、一度に多くのデバイスを接続することが可能である
・日本の5G通信は、『ミリ波』『Sub-6』『転用5G』がある
・『ミリ波』は28GHzの超高周波数帯を使用する5G通信の本命である
・『Sub-6』は速度はミリ波に及ばないが使い勝手の良い帯域を使用している
・『転用5G』は現行4Gの施設を転用することで5Gエリア拡大を容易にしている
・5G通信を利用するには「通信キャリア」「通信エリア」「通信端末」のすべてを満たす必要がある
・5Gのデメリットは、バッテリーの消耗や通信コストの増大などである
・5Gの利用に伴って端末寿命が短くなる可能性もあり、端末購入コストの増大に繋がる可能性がある
・大容量・超高速通信で通信コストが増大する可能性のある5Gは、そこそこの通信環境を割安に使いたい格安SIMユーザーと相いれないのではないか
・あえて5G通信を利用しない選択肢もある

確かに映像やIoTの分野では5G通信は不可欠で、これまでの4Gとは次元の異なる通信環境をもたらす可能性が高いですが、一般のユーザーにとって、5Gが不可欠とは言い難いものがあります。
100Mbpsを超える速度が出せるようになった4G通信で不足なく利用できるユーザーもいるはずです。
むやみに5Gに飛びつかず、自らのスマホ利用に鑑みて取捨選択をすべきと言えるでしょう。

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