
災害時にスマホでできること~安否確認・情報収集・被災生活補助
2025.12.24
大地震や台風、集中豪雨、火山噴火などの大規模な自然災害発生時にスマホを役立てる方法を考えます。安否確認や避難場所の確認、家族の集合、災害情報の収集や救援依頼、被災後の生活補助、など、命に直結する諸問題の解決や緩和・軽減にスマホが役立ちます。
今回のテーマは、「災害発生時のスマホ活用」です。
日本が世界有数の地震大国であることは周知の事実であり、いつ何時発生するかもしれない大地震に対して心構えや備蓄も含めて、相応の「準備」をしておくことは非常に重要です。
加えて、昨今では地球温暖化の影響か、台風や集中豪雨などの激甚化が顕著であり、猛暑や熱帯夜なども含めて、環境や農作物への影響も見過ごせないところへきています。
今回は、地震や台風・集中豪雨などの大災害発生時のスマホ活用について見ていきます。
災害に備える必要性とは

災害に対しては、日ごろの準備や心構えが重要だと言われます。
日本で生活していると慣れてしまうのか、地震や台風・集中豪雨への警戒や備えが疎かになりがちですが、実際には、大災害発生によって大きな被害や犠牲が伴うことは忘れてはなりません。
日本は地震大国~地震の20%が日本周辺で発生
我が国は言わずと知れた「地震大国」であり、世界で発生する地震のおよそ1~2割が日本周辺で発生すると言われています。
また、世界で起こるマグニチュード6以上の地震についてもその約20%が日本で発生しています。我が国の国土面積は地球の0.25%にすぎないのに、地震の割合はその80倍にも達していることになります。
さらに、日本における1年間の地震発生回数は、震度3以上の地震で平均247回(約3日に2回)、震度1以上の地震は年間約2,400回(1日平均6.6回)も観測されています。
台風や集中豪雨の激甚化傾向~地球温暖化による水蒸気量の増加
昨今の日本では、毎年のように大型台風が襲来し、線状降水帯等の集中豪雨による被害が激甚化しています。
台風や豪雨の激甚化の主な理由は、地球温暖化による海面水温の上昇と大気中の水蒸気量増加で、台風はより強く発達し、大雨は短時間に集中して降る傾向が顕著になっています。
日本の平均気温は過去100年で約1.3℃上昇し、世界平均(0.77℃)よりも速いペースで温暖化が進行しています。
これにより、エネルギー源である海水表面の温度が上昇するため台風は大型化し、空気中に蓄えられる水蒸気量が増えることにより、大雨・豪雨の規模が拡大する傾向にあるのです。
災害への備えが重要

大地震や台風・集中豪雨などの災害に備えて、事前に準備しておくことが非常に重要です。
家庭での準備として欠かせないのは以下の3点です。
(1)被災時の避難場所・避難経路の確認
(2)食料品・飲料等の備蓄
(3)安全の確保
被災時の避難場所・避難経路の確認
現代社会において、家族が常に一緒に行動することはほぼ不可能です。
通勤・通学のために自宅を離れ、家族が別々に行動していることが当たり前なので、いざ災害が発生した際には、「家族がどこで集まるのか」「どういう経路で避難するのか」等を事前に確認し、申し合わせておくことが重要です。
災害発生時には行政などによる避難所が開設されますが、家族がどこに集まるのかを事前に申し合わせておかないと、災害の混乱の中で家族が会えないといったことも起こり得ます。
食料品・飲料等の備蓄、非常持ち出し袋の準備も
行政による災害支援の手が届くのは災害発生から約72時間後(3日間)とされており、この間は、自力で生き延びなければならない「自助」の期間とされています。
飲料水は最低でも≪1人1日3リットル×最低3日分=1人9L≫を備蓄しておく必要があり、食料品は、保存食(アルファ米、缶詰、乾パンなど)を人数分用意する必要があるとされています。
また、懐中電灯、ラジオ、モバイルバッテリー、トイレットペーパー、簡易トイレなどの生活必需品も必要ですし、常備薬、救急セット、現金、保険証コピー、衣類などと共に「非常持ち出し袋」を用意しておくことも非常に有用です。
特に、ないと命に関わるような薬品は必ず持ち出せるような配慮が必要です。
安全の確保~ガラスの飛び散り防止や家具の固定など
災害発生時に注意しなければならないのは、強風や揺れで破損したガラスで怪我をしたり、倒れてきた家具の下敷きになったり、頭を強打するなどです。
ガラスには飛散防止用のシートを貼ったり、家具は壁に固定したりするなどの事前の対策が重要ですし、建物全体の耐震補強を実施したり、止水板や土嚢などの浸水対策を講じておくことも必要です。
災害発生時のスマホ活用

前項で生活必需品の準備が必要と述べましたが、現代において最も生活に必要な機器はスマホや携帯電話ではないでしょうか。
ここでは、災害発生時にスマホをいかに活かすかについて考えます。
災害発生時にスマホを活用する事例として以下のような場面が想定できます。
・安否確認
・情報収集
・避難支援
・生活補助
安否確認
災害発生時にスマホや携帯電話を活かす方法として真っ先に思い浮かぶのが「安否確認」です。
別れ別れになっている家族や親類・友人の安否をスマホで確認する方法はいくつか用意されています。
災害用伝言板
災害用伝言板は、大規模な災害が発生し電話が繋がりにくくなった時に、自分の安否を登録したり、家族や友人の状況を確認したりできる公共の掲示板サービスで、NTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯キャリアが提供します。
【使い方】
災害発生時に携帯キャリア各社のトップ画面や専用アプリに表示される「災害用伝言板」メニューからアクセス可能です。
【登録方法】
自分の電話番号を入力した上、「無事です」等の簡単な定型文を選んで登録できます。
【確認方法】
安否を知りたい人の携帯電話番号を入力して検索します。
災害用伝言ダイヤル
大規模災害で電話がつながりにくくなったときに、安否情報を音声で録音・再生できる「音声伝言板サービス」で、NTT東日本・西日本が提供しています。
【使い方】
「171」に電話をかけます。
【登録方法】
ガイダンスに従って「1(録音)」を押し、被災地の電話番号を入力して30秒以内のメッセージを録音することができます。
【確認方法】
「171」にかけ、「2(再生)」を押し、相手の電話番号を入力して録音を再生することができます。
災害用伝言板(web171)
大規模災害が発生した際に、インターネットを使って安否情報を文字(テキスト)で登録・確認できるサービスです。 NTT東日本・西日本が提供しています。
【登録方法】
『キー』となる自分の電話番号(固定電話でも可)をハイフンなしで入力し「登録」ボタンを押し、名前(ひらがな)、安否状況(「無事です」などを選択)、および100文字以内のメッセージを入力し「登録」すれば自分の安否を登録できます。
【確認方法】
トップ画面で探したい相手の「電話番号」をハイフンなしで入力し「確認」ボタンを押すと、その番号で登録されている伝言の一覧が表示されるので必要な伝言を確認します。伝言を確認した後、そのまま返信(伝言)を登録することが可能です。
※固定電話・携帯電話どちらの番号でもキーとして使えテキストで情報を残せます。171(電話版)と情報が連携しているため、音声の内容をテキストで確認することも可能なので、例えば、音声で登録された伝言を、別の人がテキストで確認することが可能です。
Googleパーソンファインダー

「Googleパーソンファインダー」は、Googleが大規模災害時に提供する安否情報の登録・検索Webサービスです。前述の「災害用伝言板」は主に「電話番号」をキーにしますが、「Googleパーソンファインダー」は、電話番号はもちろん、名前(漢字・ひらがな)でも検索できるのが最大の特徴です。
電話番号を知らなくても名前で検索できるうえ、Googleが世界規模で公開するため、本人や家族でなくても、海外からでも安否を確認することが可能です。
LINE(グループLINE)
災害時、グループLINEは、身近で機動的な安否確認ツールとして機能する可能性があります。災害伝言板などの公的サービスが登録情報を保管・確認というシンプルな機能に徹しているのに対して、グループLINEはグループに参加している全員に動的に一斉に安否確認や情報伝達を行うことが可能です。
1. リアルタイムな一斉安否確認と情報伝達
「自分は無事か」「どこにいるか」「周囲で何が起こっているのか」「必要なものは何か」等々を個別に連絡する手間を省き、グループ内の全員へ一瞬で状況を伝えられます。
また、1人ずつ電話をかけたりメール送信する必要がないため、通信回線の混雑(輻輳)を避けるという公共的なメリットも持っています。
2. 「既読」による生存確認
「既読」が付かないことで、返信が打てないほど切羽詰まった状況等の参加者の状況を推しはかることができます。
逆に言えば、返信がなくても「既読」が付くことでメッセージを見ることができる状況にあることはわかります。またスマホの電源が落ちていないことも重要な情報となります。
3. 視覚情報の共有
写真をアップすることで、文字だけでは伝わらない現場の状況を正確に伝えられます。
4. 情報の蓄積(ノート機能・アナウンス機能)
避難場所や集合場所の再確認や最優先情報の固定など流れてほしくない重要な情報を目立つように固定できます。
5.位置情報送信機能
LINEトーク(グループLINE含む)を利用して、自分の現在地や任意の場所の位置情報を送信することができます。災害時には、救援要請時の正確な場所の伝達や、離れ離れの家族の合流場所の正確な把握などに有益な機能です。
Facebook「災害支援ハブ」

Facebookの「災害支援ハブ(Crisis Response)」は、大規模災害発生時にFacebook上でつながっている友人や家族に自分の安否を知らせたり、支援を募ったりできる災害支援ページです。
大規模災害が起きた際にFacebook画面上に「無事を報告しましょう」という案内が出ます。
【セーフティチェック(安否確認)】
災害が発生した地域にいると思われるユーザーに、Facebookから「無事ですか?」という通知が届き、「自分の無事を報告」ボタンをタップするだけでタイムラインに『無事』が自動投稿されすべての友達に一斉に「無事であること」が伝わります。
【コミュニティヘルプ(支援の要請・提供)】
被災地で、「食料が必要」「避難場所がある」「移動手段を提供できる」といった情報を投稿・閲覧できる、「助けが必要な人」と「助けたい人」をつなぐ掲示板のような機能
【情報収集と共有】
災害に関連するニュース、写真、動画などの投稿が1か所にまとめられます。
X(Twitter)「#救助」
X(旧Twitter)での「#救助」は、大規模災害で孤立したり生命の危険がある際に、SNSを通じて周囲や救助機関に助けを求めるためのハッシュタグです。電話(119番)が繋がらない場合の救援依頼の手段の一つとして利用できます。
具体的な状況や具体的な場所とともに、近くの目印(コンビニや看板)の有無や、可能であれば写真・位置情報をアップすることで精度が向上します。
【「#救助」利用の注意点】
・119/110番通報が優先
消防や警察はSNSを常に監視しているわけではないので、まずは119/110番通報を試した上でどうしても繋がらない時にSNSを使いましょう。
・「報告」と「削除」必須
無事に救助されたら必ずその旨を投稿(報告)し、元の救助要請ポストを削除しましょう。救援依頼ポストを放置すると、未救助と判断され救助隊が誰もいない場所に向かってしまう等の無駄や混乱を招きます。
・善意であってもコピペ拡散禁止
他人の救助要請を見つけた場合でも内容をコピーして自分の投稿として投稿することはNGです。「いつの時点の情報か」が分からないので救助の妨げになります。拡散する場合は必ず「公式リポスト(旧リツイート)」を使いましょう。
情報収集・ニュース

スマホは情報収集ツールとしても優秀です。 ニュースサイトを閲覧すれば、災害の状況や支援の様子などが分かりますし、政府や行政機関のアプリやWEBでは最新の災害情報が入手できます
X(Twitter) 行政公式アカウント
首相官邸・総務省消防庁・防衛省自衛隊などの公式アカウントをフォローしておけば、災害状況や救援活動などの情報が入手できますし、地域の行政のアカウントなら、地域ごとに即した情報が手に入ります。
首相官邸
@Kantei_Saigai総務省消防庁
@FDMA_JAPAN防衛省自衛隊
@ModJapan_jp東京都防災
@tokyo_bousai横浜市総務局危機管理室
@yokohama_saigai川崎市危機管理本部
@kawasaki_bousaiX(Twitter)「#減災リポート」
X(旧Twitter)の「#減災リポート」は、ウェザーニュース社とXが連携して実施している、現地の被害状況や気象状況をリアルタイムに共有するためのハッシュタグです。
「#減災リポート」を付けて写真や動画を投稿すると、その情報が「減災リポートマップ」という地図上に「面」の情報として集約されるため、被害が集中している地域がひとめでわかります。
ハッシュタグ「#減災リポート」を付けて、被害の状況がわかる写真または動画を投稿し、テキストで状況の説明を補足します。「道路が陥没している」「橋が流されている」等の情報を投稿することで、周辺にいる人の二次被害を防ぎます。
【「#減災リポート」投稿の注意点】
・身の安全が最優先
自分の身の安全を最優先しましょう。危険な情報をあえて取りに行くような行為は絶対にNGです。
・プライバシーに配慮
位置情報を付けると正確な場所が伝わりますが、自宅周辺を投稿する場合は、自宅の場所が特定されないよう注意が必要です。また、写真や動画を撮影する場合には人物などの映り込みに十分な配慮が必要です。
X(Twitter)「#減災 地域名」
「#減災 地域名」でより小さい範囲の情報に絞り込むことができます。
また、「#避難所 ○○市」といった「目的」と「地域」の組み合わせによる検索で、よりきめ細かな情報を得ることができます。
天気・気象アプリ
天気・気象アプリをインストールしておくことで、天候や気温、風速、降雨・降雪などの気象状況を把握することができます。
被災時には、天候の状況により避難生活の難易度が大きく変化しますし、予期しない降雨や降雪は生命の危険に及ぶケースも想定できるので、被災時の気象情報の取得は重要です。
避難支援
被災時に避難や避難生活を支援してくれるアプリや機能です。
なくても何とかなるのかもしれませんが、支援アプリがあれば、避難がしやすくなったり、避難所生活での負担が少しでも軽減できる可能性があります。
地図アプリやマップアプリは避難所や目的地までのルート案内で移動時の負担を軽減してくれますし、翻訳アプリは、外国人とのコミュニケーションには欠かせません。
【全国避難所ガイド】
支援機能の中でも「全国避難所ガイド」は災害時の必須機能です。
「全国避難所ガイド」とは、全国の自治体が定めた災害時の避難所や避難場所を検索できるスマートフォン向け防災アプリで、全国の避難所・避難場所を15万件以上(指定避難所、緊急避難場所、帰宅困難者一時滞在施設、津波避難施設、災害医療機関、給水拠点など)収録しています。
現在地や登録した地域から最寄りの避難所・避難場所を自動検索したり、「ルート案内」や「避難コンパス」で方向を示す機能も搭載しています。
全国避難所ガイド
災害時の避難所や避難場所を検索生活補助

被災後の生活を補助してくれる機能やアプリがあります。
普段、なにげなく利用しているアプリでも、災害発生時に強みを発揮するものがあります。
決済アプリ(ウォレットアプリ)
Apple PayやGoogle Payなど、スマホで電子決済ができる決済アプリは、現金やクレジットカードを持ち出せなかった場合でも、買い物などが可能になります。
もちろん、地域全体が停電している場合には使えませんが、店舗側の決済端末が稼働していれば、現金やクレジットカードなしでも利用可能です。
ネット銀行アプリ入出金機能
一部の銀行で可能な「アプリ入出金」は、キャッシュカードがなくても現金を引き出すことが可能です。
こちらも地域全体が停電している場合には利用できませんが、コンビニなどに設置のATM機が稼働していれば、現金の出し入れが可能です。
健康管理・ヘルスケアアプリ
災害時の避難生活では、環境の変化やストレスから体調を崩しやすくなります。スマホのヘルスケア機能を正しく使うことで、自分や家族の健康を守る「セルフケア」が可能になります。
1. 「メディカルID」の設定
iPhoneの「ヘルスケア」やAndroidの「緊急情報」にある機能で、スマホがロックされていても救急隊員などが持病、アレルギー、血液型、緊急連絡先を確認することができる機能です。意識がない場合や、パニックで自分の情報をうまく伝えられない時に、適切な処置を受ける助けになります。
2. お薬手帳アプリの活用
普段飲んでいる薬の情報をデジタル化しておけるアプリです。避難所で薬が切れた際でも正確な薬品名や用法がわかれば、医師や薬剤師が代替薬を処方しやすくなります。「EPARKお薬手帳」などは家族分もまとめて管理でき、オフラインで閲覧できるものも多いです。
「マイナ保険証」も同じく薬の情報をデジタルで管理できますが、マイナ保険証は利用する際に必ずネット環境が必要なことや、新たなデータの反映に少し時間がかかること、市販薬の情報も自分で入力・保存できる点などで、災害時利用においては「お薬手帳アプリ」の方が有効とされています。
3. 「エコノミークラス症候群」予防
歩数計・活動量計を使用すれば、被災中でも避難所や車中泊での活動量を把握できます。狭い場所でじっとしていると血栓ができやすくなりますが、アプリの歩数を見て「今日は全然動いていない」と気づいたら、意識的に歩いたり足首を動かしたり水分を摂ったりする目安にすることができます。
4. メンタルケアと睡眠
災害時、人は強い不安や緊張で「自律神経」が乱れやすくなりますが、「マインドフルネスアプリ」を使うことで、スマホ一つでどこでも冷静さを取り戻すためのサポートが受けられます。
「マインドフルネスアプリ」は、5分程度の瞑想や呼吸ガイド、睡眠導入サポートなどの機能を備えており、自律神経を整える助けとなります。
「ホワイトノイズアプリ」は、すべての周波数帯の音を均等に含んだ「ザー」という一定の雑音や、雨音・川のせせらぎなどの「環境音を流すアプリ」で、避難所生活において「心の平穏」を保つための非常に強力なツールになります。
LEDライトの活用~照明・救難信号として利用する
スマホのLEDライトを生活補助に利用することが可能です。
・夜間照明として利用する
LEDライトを点灯したスマホを置き、水の入ったペットボトル(ラベルを剥がして)を置くと光が拡散して照明代わりになります。
・救難信号として利用する
スマホのLEDライトのON/OFFを利用して、モールス信号のSOS(・・・ ――― ・・・)をライトの点滅で伝えることができます。
(・・・ ――― ・・・)は国際的に「SOS」として通用します。
※ただしいずれも電力の消耗が大きいので、あまり頻繁に使用すると充電可能でない場合にはバッテリー不足でスマホの他の機能も使えなくなる可能性があるので要注意です。
災害時にスマホを活用するため不可欠な条件

災害時を含めてスマホは現代人にとって非常に有用なツールであり、なくてはならないものですが、スマホを活用するためには必ず確保しなければならないものが2つあります。
「通信」と「電力」です。
通信の確保~2系統以上の通信手段
スマホにとっての「通信」とは、具体的には通話やデータ通信を可能にする通信キャリアとの契約です。通信SIM(eSIM含む)を挿入することでスマホで通話や通信が可能となります。
大規模災害の場合には通信キャリアの施設も被災する可能性が高く、一部あるいは全部の通信が途絶してしまう可能性も低くはありません。
ただ、そういう場合でも通信キャリアは臨時基地局や移動型基地局を設置し、衛星回線や船舶基地局を活用して通信の確保・復旧を試みます。また、発電機や蓄電池を持ち込んで既存の基地局を維持する取り組みも行うため、長期間にわたって通信途絶という事態は想定しにくいと言われています。
ユーザーとしては、2系統の異なる通信キャリアの通信回線を契約しておくことで、いずれかの基地局が通信不可となっても、他のキャリアでの通信が可能なケースもあるため、2系統契約が通信を確保しやすいと言われます。
電力の確保~バッテリーの回復

スマホを活用するために必要なもう一つは「電力」です。
スマホは充電式バッテリーを搭載しているので、一定量の電力は蓄電できますが、通話・データ通信、その他の機能やアプリの利用で蓄えた電力は減少してゆきます。
位置情報利用や動画撮影・閲覧、LEDライト利用などは特に電力消費が大きいので無暗に多用しないよう心がける必要があります。
通常時であれば、バッテリー残量が減少すればACコンセントにACアダプターを差し込み、ケーブルをスマホに刺せば簡単に電力は回復できますが、災害時の活用を前提とする場合は、必ずしもACコンセントからの充電が可能とは限りません。
大規模停電が発生した場合などには、数日間、電気が来ないということもあり得ます。
そういう際にスマホの蓄電が枯渇してしまえば、被災生活はかなり困難な状況に追い込まれてしまうため、何らかの方法で、電力を回復する術を用意しておくべきです。
モバイルバッテリーは手軽にスマホに充電できますが、容量はあまり大きくなく、一般的な10,000mAh(ミリアンペア)のモバイルバッテリーでは、最新のiPhone 17のバッテリー(3,692mAh)を2回と半分ほどしか充電できません。
できればポータブル電源を用意しておくことで、もう少し余裕を持って電力確保したいものです。
例えば、300Wh(ワットアワー)のポータブル電源の容量は約80,000mAhに換算できるので、iPhone 17(3,692mAh)を20回以上満充電することが可能です。1日1回フル充電するとした場合、家族4人(4台)のスマホを5日間、充電する容量を持ち合わせています。
これなら行政の支援の手が届くまでの間、少なくとも家族のスマホの電力は確保できそうです。さらに扇風機やポータブル冷蔵庫、電気毛布、ランタンなどにも電力を供給する場合は、1,000Wh超のポータブル電源がおすすめです。
さらに、ソーラーパネルとの組み合わせで、消費した電力を回復することも重要です。
基地局が倒壊しても通信可能な衛星通信StarLink

従来の携帯電話網とは異なる方式の通信が利用可能になりつつあります。
代表的なものが衛星通信「StarLink」です。
「StarLink」は、地上に設置した専用アンテナが衛星と通信し、そこからWi-Fiを飛ばす仕組みで、専用端末がなくても、避難している人が自分のスマホでLINEやニュース確認などが可能で、災害時の通信手段として注目されています。
高速・大容量の通信が可能で、動画送信も可能なほど通信速度が速いため、被災状況を映像で送るなど、現場のDX化を支えています。実際に2024年の能登半島地震において、数百台のStarlinkが避難所や学校、通信会社の基地局復旧のために投入され、大きな成果を上げました。
具体的には、自治体が設置した衛星アンテナから提供される無料Wi-Fiを利用したり、通信キャリア(ドコモ・au・SB・楽天)が、衛星アンテナを積んだ車(車載型基地局)を被災地に派遣しエリアを復旧させることが可能です。
さらに今後は、スマホが直接衛星と通信して緊急メッセージを送れるサービス(iPhoneの緊急SOS機能や、楽天・KDDIが進めるプロジェクト)の運用が始まりつつあります。
災害時のスマホ活用まとめ
ここまで見てきたように、スマホは災害時に大いに役立つツールとして期待できます。
安否確認をはじめ、情報収集や救援要請や、被害状況などの共有などスマホでできる災害対策は多岐にわたります。
プラットフォーマーも公的機関や行政などもスマホを活用することで被災者の救援や被災生活支援などにも役立てる動きが顕著です。
災害時に大きな力を発揮しそうなスマホですが、通信が途絶してしまったり、電力が枯渇することで力を発揮できない状況もあり得ます。いかにそうした状況を克服できるかがカギとも言えそうです。
さらに、必要なアプリをインストールしたり、家族で被災時の行動や集合場所などの打ち合わせなど、事前に準備しておくべきことも少なくありません。災害伝言板の試用や、グループLINEを作っておくなど、日ごろから被災を意識した準備を怠らないことが重要です。
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