iPhoneはSIMカードとeSIMどちらがいい?eSIMのメリットとデメリット
2024.02.29
今回のテーマは「iPhoneにはSIMカードとeSIM、どちらを使うべきか?」です。
まずSIMとしてだけ考えるならば、従来型のSIMカードにはSIMカードの良さがあり、eSIMにはeSIMの良さがありますし、逆にSIMカードにもeSIMにもそれぞれデメリットがあります。
また、SIMを1枚だけ使用する場合と、複数利用(詰まり複数回線利用)する場合とでは選択肢が分かれるケースもあります。
それでは、iPhoneではどちらのSIMを使うのが正解なのでしょうか。
今回はそのあたりを考えてみることにしましょう。
SIMとは?
そもそもSIMとは何なのかというところから始めましょう。
SIMとは「Subscriber Identity Module」の略語で和訳では「加入者識別モジュール」といいます。この場合の「加入者」とはモバイル通信の契約者であり、「識別」とは氏名や住所などの個人情報が電話番号(識別番号)と紐づけられた状態を指します。
また、モジュールとは「交換可能な部品」を意味するので、SIMとは『モバイル通信の契約者と電話番号を紐づけて識別するための部品(チップ)』ということになります。
SIMカードとは
これまでは「SIM」と「SIMカード」は特に区別することなく使用されてきましたが、eSIMが登場したことで、物理的な実態のあるSIMを表すためにあえて「SIMカード」と呼称する必要が出てきました。
つまり「SIMカード」とは、従来型のスマホに差し込んで使用する物理SIMのことです。
eSIMとは
物理的なSIMカードに対して、実態のない仮想的なSIMカードを「eSIM」と呼びます。
実はeSIMは実態がないわけではなく、利用者から見えないだけで実態は隠れています。eSIMは「Embedded SIM」の略ですがその意味は「内蔵SIM」です。
つまり、eSIMは物理的なSIMカードのように人の手でiPhoneに差し込むのではなく、あらかじめiPhone本体内に内蔵されたSIMカードにオンラインから加入者識別情報を書き込んで使用するSIMなのです。
内蔵SIMの加入者情報を書き換えることで簡単に通信会社の乗り換えが可能です。
iPhoneのSIM対応状況
SIMカード | eSIM | デュアルeSIM | |
iPhone X/iPhone 8以前 | 〇 | × | × |
iPhone XS/XS MAX/XR | 〇 | 〇 | × |
iPhone 12シリーズ | 〇 | 〇 | × |
iPhone SE(第2世代) | 〇 | 〇 | × |
iPhone 13シリーズ以降 | 〇 | 〇 | 〇 |
iPhone SE(第3世代) | 〇 | 〇 | 〇 |
iPhone XおよびiPhone 8/8 Plus以前は物理SIMカード1枚のみの対応でしたが、2018年発売のiPhone XS/XS MAX/XRからeSIMに対応し、デュアルSIMにも対応しました。
iPhone XS/XS MAX/XR、iPhone 12シリーズ、iPhone SE(第2世代)は、デュアルeSIMに非対応のため、デュアルSIMは物理SIMカードとeSIMの組み合わせとなります。
デュアルeSIMは、iPhone 13シリーズ以降のすべての機種で対応しています。
【デュアルSIM・デュアルeSIMとは】 デュアルSIMとは、1台のiPhoneに2枚のSIMカードを挿入して利用できる機能のことを指します。仕事用/個人用など2つの電話番号を使い分けることができます。また、2つの異なる通信サービスを利用できるため通信障害時などに通信手段を確保しやすくなるメリットがあります。 デュアルeSIMとは、eSIMのみでデュアルSIM利用ができる機能で、iPhone 13以降に標準装備されました。 |
eSIMのメリットとデメリット
eSIMには物理SIMにないメリットが多く、iPhoneをはじめとしてメーカー各社のスマホにも採用が進んでいます。しかし反面、物理SIMカードにあったメリットが失われた部分もあります。
本項ではeSIMのメリットとデメリット、SIMカードから失われたメリットなどを紹介します。
eSIMのメリット
eSIMは、内蔵SIMにオンラインで加入者情報を書き込んで利用できますが、このことが様々なメリットを生んでいます。
(1)契約から開通までが早い(即日開通)
eSIMのメリットの1つめは「開通までが早い」という点です。
従来型の物理SIMは、通信会社で加入者識別情報を書き込んだSIMを、宅配便などで契約者の手元に届ける必要があるため、最低でも契約から1日~2日のインターバルが必要でした。
宅配便が翌日配達地域であれば、契約日の翌日(契約が成立した時間帯によっては翌々日)に到着するため、配送する間は契約者は契約した通信サービスを利用することができません。
その点、オンラインで加入者識別情報を書き込めるeSIMであれば、契約日に即日開通して利用開始が可能です。
(2)通信サービスの乗換えも即日対応
現在利用中の通信サービスから他社に乗換える場合でも、新たな通信サービスの加入者識別情報もオンラインで書き換えることが可能なため、乗り換え時にもSIMカードの到着を待たずに即日利用開始が可能です。
(3)複数のeSIMを登録しておくことができる
iPhone XS以降の機種でeSIMに対応、デュアルSIMでの利用が可能になりました。また、iPhone 13以降はデュアルeSIMにも対応し、デュアルeSIMにも対応しました。
iPhoneには複数のeSIMを登録しておくことが可能です。デュアルeSIMに対応したiPhone 13以降でも、同時に利用できるeSIMは最大2枚までですが、登録自体は8個以上のeSIMを登録しておくことが可能(※)です。
※登録したeSIMの中から、状況や必要に応じて2個のeSIMを選んで使用します。
(4)SIMカードの返却が不要
SIMカードの場合は、解約や他社サービスへの乗換え、または破損や汚損によるSIMカードの交換の際、SIMカードの返却が必要でした。
実は通信契約を結んでも、SIMカードは買取りではなく「貸与品」なので、使わなくなったSIMカードは、送料を契約者が負担して発行した通信会社に返却する必要があります(※)。
しかし、eSIMではSIMがiPhoneに内蔵されているためSIMカードの返却が不要です。少額ですが契約者の送料負担や発送の手間が不要となりました。
※コロナ禍により、SIMカードの返却が不要となった通信サービスもあります。
(5)破損・汚損・紛失の恐れがない
eSIMはiPhoneに内蔵されているため、破損したり汚れたりすることはありませんし、取り外せないので紛失することもありません。
SIMカードの再発行には費用がかかりますが、取り外せないeSIMではSIM交換がないため、ここでも不要なコストが削減されていることになります。
eSIMのデメリット
そんなメリットだらけに見えるeSIMですが、意外と知られていないデメリットも存在します。
特に使い勝手を大幅に悪化させるようなものではありませんが、頭の片隅にでも覚えておくと良いかもしれません。
(1)複数端末での利用が面倒
物理SIMカードでは、初期設定さえ済ませておけばSIMカードを差し替えるだけで複数の端末で利用することが可能ですが、eSIMではそれができません。
eSIMを他端末で利用する際には、eSIMの再発行が必要なため複数端末で簡単に共用することが難しいというデメリットがあります。
(2)eSIMだけでデュアルSIM利用ができない機種がある
iPhoneは、iPhone XS/XS MAX/XRからeSIMに対応しましたが、eSIM2枚でのデュアルSIM(デュアルeSIM)に対応したのはiPhone 13シリーズ/SE(第3世代)からです。
つまりiPhone XS/XS MAX/XR/12シリーズ/SE(第2世代)ではeSIMのみでのデュアルSIM利用はできず、物理SIMカードとeSIMのデュアルSIMのみ利用可能です。
SIMカード | eSIM | デュアルeSIM | |
iPhone X/iPhone 8以前 | 〇 | × | × |
iPhone XS/XS MAX/XR | 〇 | 〇 | × |
iPhone 12シリーズ | 〇 | 〇 | × |
iPhone SE(第2世代) | 〇 | 〇 | × |
iPhone 13シリーズ以降 | 〇 | 〇 | 〇 |
iPhone SE(第3世代) | 〇 | 〇 | 〇 |
(3)eSIMを選べない通信会社がある
MNO(大手キャリア)とそのサブブランドやオンライン専用プランは問題ありませんが、MVNOの中にはeSIMの取扱いのないケースがあり、必ずしもすべての通信サービスでeSIMをチョイスできるわけではありません。
eSIMのメリットを享受したい場合には、eSIM発行が可能な通信サービスを選ぶ必要があります。
【物理SIMカード⇔eSIMの乗り換えは可能】 他社通信サービスに乗換える場合には、物理SIMカードとeSIMいずれを使用していても乗り換え時に新たに物理SIMカードとeSIMいずれかを選択可能です。SIMの種類は乗り換え時には影響はありません。 |
(4)初期設定時に別端末が必要な場合がある
iPhoneは通信の初期設定を行う際に、オンライン上のQRコードの読み取りが手順に含まれるため、初期設定するiPhone以外にもう1台スマートフォンが必要です(iPhoneでなくても構いません)。
ただし、少々手間はかかりますが、別端末でQRコードを表示させる方法以外にも、手動入力なども可能なので絶対のものではありません。
iPhoneではSIMカードとeSIMどちらを選ぶべき?
ここまで見てきたように、SIMカードにはSIMカードの良さがあり、eSIMにはeSIMの良さがあります。逆に、それぞれのデメリットもあります。
一概にどちらのSIMがiPhoneに向いている、選ぶべきとは言い切れませんが、iPhoneの利用状況などに応じて選ぶと良いでしょう。
1台のiPhoneだけで利用する場合
1台のiPhoneで、単一回線または複数回線を利用する場合は、開通が早く契約日から通信を利用できるeSIMを選択するとよいでしょう。
1台のiPhoneで利用する場合には、特に物理SIMカードを選ぶメリットは見当たりません。
逆に、紛失や破損、返却の必要などのデメリットが多いのでeSIMでの利用がおすすめです。
複数の端末でSIMを共有する場合
eSIMは端末に内蔵のSIMに加入者識別情報を直接書き込んでしまうため、1回線を異なる複数の端末で使い分けることができません。
複数のiPhone、iPhoneとiPad、iPhoneとAndroidスマホなど、複数の端末で使い分けたい場合には、物理SIMカードを選ばざるを得ません。
物理SIMカードは、端末個々に初期設定を済ませておけば、SIMカードを差換えるだけで簡単に複数端末で利用することができます。
ただし、SIMカードが手元に届くまでの「配送期間」は通信を利用できないデメリットがあります。
機種変更時の初期設定はどちらが簡単?
端末を交換する際には再び初期設定が必要ですが、iPhoneはSIMカードでもeSIMでも設定の容易さはほとんど同等ですので、どちらを選んでも差はありません。
ただし、一部の通信サービスではiPhoneの「eSIM クイック転送」機能を利用することができます。「eSIM クイック転送」が利用できる場合には再設定はeSIMの方がかなり容易となります。
【eSIMクイック転送とは】 iPhoneの「eSIMクイック転送」とは、iPhoneどうしでSIMの情報を移動することができる機能です。その際、通信事業者に連絡する必要はありません(対応事業者の場合)。 旧端末に設定済みのeSIMおよびSIMカードの情報を、新端末のeSIMに転送して通信の初期設定を完了することができます。 |
HISモバイルのeSIM設定方法
ここではHISモバイルのeSIMの利用方法・設定方法について解説します。
利用可能な機種、利用できない機種がありますので注意してください。
※eSIMが利用可能な料金プランは「自由自在290プラン」「自由自在スーパープラン」いずれかとなります。
※HISモバイルは、住所確認書類(住所確認コード)を発送し届出住所で受け取らなければならないため、eSIMであっても契約当日の開通はできません。
※開通や端末設定方法は、本人確認書類に記載されています。
HISモバイルでeSIMが利用可能なiOS機種
HISモバイルでは以下のiPhoneでeSIMが利用可能です。
iPhone 15 モデル | iPhone 14 モデル |
iPhone 13 モデル | iPhone 12 モデル |
iPhone 11 モデル | iPhone XS モデル |
iPhone XR | iPhone SE 第2世代、第3世代 |
iPadもデータ通信のみ利用可能です。
iPad Pro 11インチ 第1世代、第2世代、第3世代 | iPad Pro 12.9インチ 第3世代、第4世代、第5世代 |
iPad Air 第3世代、第4世代、第5世代 | iPad 第7世代、第8世代、第9世代 |
iPad mini 第5世代、第6世代 | – |
上記以外のiOS端末は、eSIMが利用できないので要注意です。
HISモバイルのeSIM設定方法(iPhone)
HISモバイルから「本人確認書類(住所確認コード)」が届いたら、以下の手順で「開通」作業を行います。
(1)My HISモバイル(マイページ)にログインし「住所確認コード」を入力する
(2)端末のEIDを入力する
EIDは以下のいずれかの方法で確認できます
・通常の電話アプリで「*#06#」と発信
・「設定」 >「一般」>「情報」>「EID」の項目
(3)MNPご利用の場合はMNP予約番号を入力する
(4)入力内容を確認後に開通
開通手続きから実際に開通するまでの目安は以下のとおりです。
申込み時間 | 開通完了時間の目安 |
10:00~20:00 | 申込みから1時間以内に完了 |
20:00~00:00 | 翌日11:00頃までに完了 |
00:00~10:00 | 当日11:00頃までに完了 |
開通完了のメールが届いたら、「モバイル通信プランの追加」を行います。
(5)プッシュ通知「モバイル通信の設定を完了」をタップする
eSIMがインストール可能な状態になるとプッシュ通知が届くので、設定画面の「モバイル通信の設定を完了」をタップし、「eSIMの設定を完了させます」に進みます。
「eSIMを設定」もしくは「eSIMをアクティベート」の画面からより「eSIMを設定」「続ける」へ進みeSIMのアクティベートを行います。
進行中は、「アクティベート中」→「ネットワーク接続中」と表示されます。
これでeSIMのインストールは完了です。
※インストールしたeSIMはHISモバイルを利用中は絶対に削除しないようにしましょう。万が一、削除してしまった場合にはeSIMの再発行~再設定が必要となり、「eSIM再発行手数料1,100円(税込)」が必要です。 |
iPhoneにはSIMカードとeSIMどちらがおすすめ まとめ
今回はiPhoneで物理SIMカードを使うべきか、eSIMを使うべきか…について考えました。
複数端末でSIMを差し替えて利用するケースを除いて、手続きや設定が簡単なeSIMがおすすめであることがわかりました。
ただし、eSIMが利用できるのは、2018年発売のiPhone XS/XS MAX/XR以降であり、デュアルeSIMはiPhone 13シリーズ以降であることに要注意です。
HISでは2つの料金プランがeSIMに対応しています。新規契約・MNP乗り換えでも利用可能です。eSIMの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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