格安SIMとは?言葉の意味や生まれた背景など
そもそも「格安SIM」とは何なのか。そこから始めましょう。
「格安」は何に対して格安なのか…ですが、これは「大手キャリアの料金プラン」に対してです。
では「SIM」は何なのかといえば、「通信サービス」を表します。
SIMは本来、契約者情報などが書き込まれたICチップを指し、スマートフォン本体内に挿入することで、そのスマホ端末を契約者のものとして動作させるものです。
ただ「格安SIM」として用いた場合には、ICチップと言う意味ではなく、ICチップに書き込まれた契約者情報に基づいた「電話」や「データ通信」などの「通信サービス」の意味で使われています。
つまり「格安SIM」とは、大手キャリアより割安料金の通信サービスというわけです。
格安SIMはMNOやMVNOが提供している
では、大手キャリアより割安料金の通信サービスはどこが提供しているのかというと、以下の通信会社が提供しています。
● MNO(Mobile Network Operator)… 自社通信網を持つ大手キャリアとサブブランド
● MVNO(Mobile Virtual Network Operator)… 自社通信網を持たない通信会社
MNOとサブブランド
「MNO」とは、自社通信網を敷設・保有・管理する通信会社で、一般的には大手キャリアと呼ばれるNTTドコモ・au(KDDI)・ソフトバンク・楽天モバイルのことです。
MNOは自社通信網をフルに利用することができるため、高品質・常時高速の通信が可能です。
また、au(KDDI)・ソフトバンクは自社内に、第2の通信ブランド「UQ mobile」「Y!mobile」を持っており、一般的にはサブブランドと呼ばれています。
さらに、2021年に登場した「ahamo(ドコモ)」「Povo(au)」「LINEMO(ソフトバンク)」は大手キャリア3社の格安通信プランです。
最後発の楽天モバイルは、先行する大手キャリア3社に対抗するために、自身で格安通信サービスを提供するMNOです。
つまり、大手キャリアは本来のサービスのほかに以下のような格安通信サービスを運営しています。
● NTTドコモ … ahamo
● au(KDDI)… UQ mobile、Povo
● ソフトバンク … Y!mobile、LINEMO
● 楽天モバイル … 楽天モバイル自身
MVNO
MVNOは、「MNO」に「V」が追加されています。
「V」はVirtualのことで、「仮想」を意味し、日本語に訳すと「仮想移動体通信事業者」となります。
「仮想」とは自社通信網を持たず、仮想的に大手キャリアから通信回線の一部を借り受けて、「あるもの」として通信サービスを提供する通信会社を指します。
つまりMVNOとは、莫大な費用がかかる自社通信網を敷設せず、既に敷設済みの通信回線を大手キャリアからまとめて借り受け、ユーザーに小分けにして提供することでコストを下げ、格安料金で提供している通信サービスです。
「格安SIM」が生まれた背景
ではなぜ「格安SIM」が生まれたか、その背景には、大手キャリアの料金が高すぎると感じるユーザーが増えたためです。
もっと割安な通信サービスがあればいいのに…というニーズに応えるかたちでMVNOが誕生(※)しました。
MVNOに利用者を奪われないように、大手キャリアが生み出したのがサブブランドであり、格安料金プランというわけです。
他にも後発の楽天モバイルの割安料金への対抗や、政府や総務省の値下げ圧力に応えるためといった理由もあり、現在では大手キャリア自身が格安SIMサービスを提供しています。
※HISモバイルもMVNOの1つです。また、日本初のMVNOは、HISモバイルに通信回線を提供している日本通信㈱です。
格安SIMの料金が安いのにはちゃんと理由がある
格安SIMに限らず、同じ品物で高いものと安いものがあれば、高いには高いなりの、安いには安いなりの理由があります。
スマートフォンだって高品質高性能高機能なモデルと、基本性能は押さえつつ余計な機能を省いた平均的な性能のモデルとでは価格が違います。
だからといって必ずしも高性能モデルだけが売れるわけではなく、人それぞれ使い方も違えば重視することも違うので、スマートフォンの何を評価するかで選ぶモデルも違ってきますよね?MVNOの「格安SIM」も同じなのです。
自社通信網を敷設・保有しない
先にも述べたように、MVNOは自社通信網を持っておらず、大手キャリアから借り受けることで通信サービスを利用者に提供している通信会社です。
莫大なコストがかかる自社通信網の敷設せず、保有しないことで管理やメンテナンスにかかる費用の負担もなくコストを下げられるため、その分で利用料金を安くしているため格安な料金で提供できるという訳です。
店舗を持たない(または少ない)
コスト削減は自社通信網を持たないことだけではありません。
MVNOでは、他にもお金がかかるサービスをカットすることでコストを下げていますが、その最も大きなものが「店舗」です。
大手キャリアは主要駅前の好立地に店舗を設けていますが、その地代家賃や必要経費は相当額になるため、MVNOでは直営店舗を持たないケースがほとんどです(あってもごく少数)。
店舗を持たないと言うことは、地代家賃がかからない上、店舗の照明や冷暖房、充電サービスやドリックサーバーなどの電気、トイレや洗面所の水道など「光熱費」を使わずに済むということでもあります。
さらに大手キャリアショップでは何人ものスタッフを配置していますが、サービスを向上させればさせるほど人件費が高騰するため、店舗を持たないことは人件費の節減にもつながります。
店舗を持たない、最小限にすることで節減できるコストはかなりの額になるので、非常に大きなコストカットとなるわけです。
MVNOのメリット
料金の安さ以外にもMVNOのメリットはあるのでしょうか。
実は大手キャリアにはないMVNOだけのメリットもあるので、ぜひ注目してみてください。
通話料金が安い
料金が割安な通話回線を経由することで、通話料金が通常の半額(11円/30秒)になる「半額通話サービス」を多くのMVNOで提供しています。
また、「5分(10分)かけ放題」などの通話定額と半額通話サービスを組み合わせて利用することで、通話料金を低く抑えることが可能です。
特定のコンテンツの通信料が無料になる
MVNOでは、音楽や動画サービスを利用する際の通信が、プランに付属のデータ容量を消費しないカウントフリーサービスを提供している場合があります。
MVNOが指定する特定のコンテンツをいくら利用しても通信容量が減らないため、実質的に無料通信で利用していることになります。
複数の回線サービスを選ぶことができる
MVNOでは複数の大手キャリア回線のサービスを提供している(マルチ・キャリア)場合が多く、自分の好みで回線を選ぶことができます。
また、SIMフリー端末はもちろん、SIMロック端末であってもロックキャリアと同じ回線であればSIMロック解除不要で利用することができます。
手持ちの端末を利用する場合には、格安料金のままでSIMカードのみをレンタルすることも可能です(MVNOのSIMカードは貸与品なので返却が必要です)。
HISモバイルも、NTTドコモ回線とソフトバンク回線のサービスを提供するマルチ・キャリアです。
MVNOのデメリット
MVNOの最大の特徴・メリットは料金の安さですが、その安さと引き換えに失うものはないのか、デメリットがないのかが気になるところです。
混雑時の速度低下は避けられない
MVNOの通信サービスは、朝夕の通勤通学時間(各1~2時間)、昼12時台(約1時間)、夜20~22時台(約2時間)など、速度が低下して使いにくくなる場合があります。
なぜ速度が低下するのでしょうか。
通信速度の低下は、高速道路と交通量に置き換えると分かりやすいでしょう。
片道2車線の道路が渋滞せずに流れる自動車の数が1000台だとした場合、道路の車線が同じなら、自動車が2000台になったら渋滞してしまいます。
同じ1000台の交通量でも、道幅が1車線になったら渋滞してしまいますし、逆に2000台が通行しても3車線なら渋滞しないかもしれません。
話を通信に戻すと、MVNOは大手キャリアから回線を借りて自社の契約者に通信サービスを提供していますが、借りている回線の太さ(車線)に対して、通信量(交通量)が多すぎると速度低下(渋滞)を起こしやすくなります。
本来なら、最も速度が低下する時間帯の通信量に合わせて回線を借りておけば、1日中速度低下を起こすことはありません。
イメージとしてはガラガラの高速道路を数台の車がスイスイ走っている感じです。
しかし、MVNOも営利企業である以上そうはいきません。最も混雑する時間帯に併せて回線を借りてしまうと、混雑する5時間のために、そうでない19時間は回線がガラガラとなってしまい無駄が多すぎます。
そこで、混雑時もそこそこの速度を維持しつつ、あまり無駄にならないような回線量を借りるので、どうしても混雑のピークには速度低下を起こしてしまう…というわけです。
サポートがないためある程度のリテラシーが求められる
例えば、
● パソコンやスマートフォンでMVNOのWEBを開き、
● プラン内容を読んで理解し、
● 申込ページを開いて必要事項を記入~送信し、
● 本人確認書類の写真を撮って、
● アップロードする
● 通信会社から届いたSIMカードをスマートフォンに挿入して
● 初期設定を行い、開通手続きを行う
これらの作業を自分でできるリテラシーやスキルが求められるため、ネットが苦手で全然ダメ、スマートフォンの設定なんて無理…という方の場合、MVNOを利用するのは少々ハードルが高い場合があります。
大手キャリアの場合にはショップに出向けば相対で親切に説明してくれて、場合によっては設定を代行してくれる場合もあります。そうしたサポートが必要な方は大手キャリアの利用を検討されるべきでしょう。
格安SIMの仕組みと安さの理由まとめ
格安SIMの料金が安い理由と、MVNOのメリット・デメリットについて解説しました。安いのにはやはり訳がありました。
MVNOはその構造上、どうしても混雑時には通信速度が低下しますが、それが必ずしもすべてのユーザーにマイナスであるとは限りません。
例えば、スマートフォンの利用はメールやSNSだけで、WEB閲覧や動画視聴をしない方であれば、低下した速度であっても十分実用的に使えますし、速度低下の時間帯にはスマートフォンを使わない方にも速度低下は関係ありません。
ある限られた時間帯に速度低下するMVNOですが、速度低下がデメリットにならない方にとっては料金が安い非常に良いサービスとなり得ます。
あなたの使い方を考えて、MVNOも検討してみてはいかがでしょう。
HISモバイル編集部
格安SIMや格安スマホを、「お得に」「安心して」利用する上で知っておきたい情報を発信しています。ぜひ記事を参考にして、格安SIMのある生活を送りましょう!
喜田 宗彦(きた かずひこ)
2014年の某MVNOを皮切りに、これまで20社以上30プラン超を利用してきた格安SIM好きで、常に「安くて速いSIM」を探しています。
端末はiPhone 4s以降ずっとiPhone派で、タブレットはiPad、時計はApple WatchというAppleフリークでもあります。Androidスマホは数年に1台買い替える程度です。
趣味はキャンプや車中泊で、小型キャンピングカーを所有しています。
勝箆 孝道(かつの たかみち)
iPhone8・iPad Air・PCを駆使し、格安SIMを月に80GB以上使い倒す福岡在住のヘビーユーザー。世界中のビーチリゾートが大好物で、愛機のiPhone8で写真を撮るのが趣味。スマホ・写真・音楽が好きな、書いて・撮って・歌えるライター。コロナが収束したらインドネシアの秘境を撮影するために渡航予定だが、海外の海に夢中になってSIMフリースマホを2回水没させた経験から「決して海パンのポケットにiPhone8は入れない」と妻に誓った。MNO2社のコールセンターに計12年以上勤務し、通信サービスに精通。新人教育、ベテラン指導を経験。
小林 優太(こばやし ゆうた)
長野県在住のフリーランス・ライター。Apple製品好きで、使っているスマホはiPhone 8。iPhone歴10年以上。MacBook AirとiPadも愛用中。
さまざまなスマホや格安SIMにも興味があり、情報を集めてわかりやすくまとめるのが得意。
皆様のスマホライフがより豊かになる情報をお伝えしていきます!
国立 久吉(くにたち ひさよし)
フリーのライターとして活動している、国立 久吉と申します。格安SIMや光回線、その他企業向けのサービス紹介記事などを主に執筆しております。
真白 ほろ(ましろ ほろ)
Webライター。格安SIM歴は4年。シェアハウスで出会った彼と、民泊サービスを活用したノマドライフを楽しんでいます。暮らしに新しいテクノロジーを取り入れながら、日々をゆったりと過ごすのが好きです。本メディアでは、格安SIMの魅力をご紹介します。
前田 ひろし(まえだ ひろし)
これまでドコモ・auなどの大手キャリアから、Yモバイルや楽天モバイルなどの格安SIMの利用を経験。現在は、HISモバイルの格安弐拾プランをお得に利用中。ライターとしての執筆活動では、格安SIM・光回線・ポケットWiFiなど回線系のジャンルを得意としている。
山根 厚介(やまね こうすけ)
東北大学工学部中退。2002年~2017年、広島県警察。主に刑事部門で勤務。
現在はライティングなどを中心に活動中。得意ジャンルは教育、IT関係など。
【保有資格】情報セキュリティスペシャリスト、2級FP技能士、TOEIC830など